
2009年現在、アップル社は、パソコン事業どころかすっかり音楽コンテンツ周辺のビジネスに移行してしまったのは、皆さんご存知の通りです。それのみならず、iPhoneによってモバイル通信の分野にも一定以上の成功を収め、スティーヴ・ジョブスは過去10年のベストCEOになってしまった。コンピューターの、ソフトつまりiTunesとITunesStoreのネットワークと連携し、そして音楽を電子データとして販売し管理しアドバンスさえつけて、新たなパッケージモデルのiPodを生み出しました。単体コンピューターと、固定とモバイルのインターネットと、コンテンツ。全く見事なもんです。ですがそこはスルーして、今回は久々にたにふじ、原点に立ち返って(それ、原点なのかよ)音楽世界の話を。
音楽世界。それは何を指す言葉だろう。音楽業界と言うと、音楽出版ビジネスと見る印象が強いので、ここでは愛好家全てとの意味で。
さて、アップルはブランドを確立し成功しましたが、今や違法コピーをどんどんダウンロードさせるサイトも沢山あり、ウィルス感染のリスクを孕みつつ何しろ余程マイナーなモノまでコンテンツ化し、無料化している。YouTubeなどもそうですが、もう物量が多過ぎて、歯止めが利かない。違法だ違法だと触れ回るだけ疲弊し損をする構図になっています。
音楽を発信する側でもあるもまゆきゅとしても、諸手を揚げて歓迎はしたくないところですが、では誰かがYouTubeに上げたとして、その人や、ユーザーを恨むかと言うと、…どうもそうではない。出来るんだし、そうして聴いてもらった方が嬉しい。大方問題にしているのは、音楽出版ビジネスの方々で、実際、
「CCCD事件」の際には、リスナーのみならずミュージシャン側からの反発が多かった。その反発の主旨は、音質が低下するからというものでしたが、その後多くのミュージシャンが直面し、考えざるを得なくなっていったのは事実です。
メジャーは出せば成立する様な市場ではもうない。
CDなどのオブジェクトを、入り口にするか出口にするか判らないけれど、音楽にお金を払って貰う為の別な何かが必要だ、ということです。あまり音楽に相応しい言葉ではないけれど、自分のブランド価値ですね。
デジタル。原理的に(原理的にです。実際は同じとも言い切れない)差の無いものが複製出来る。アンディ・ウオーホールの夢は、彼のコンセプトを遥かに凌駕する現実になりました。そして、それらはどんどん無料に近付いていく。権利や、報酬は、どうなるんでしょう。
音楽家達は、コンサートを行い、大学で教鞭を取り、が出来る。しかし、今迄出版ビジネスをしていた人達は、どうする、どうなるんだろう。
彼等のことを心配している場合ではないのかも知れないですが、少しだけ心配です。その理由は…。
音楽は、音楽世界の住人のものです。しかし、
音楽業界、或いは音楽ビジネスは、ビジネスであり、ビジネスの側面がゼロだったら、出版もプレスも成立しない。よって活性化しない。
ここが両極化しています。一方は、かつて引用した様に、弁護士が闊歩する世界。もう一方は、情熱を持って発掘を行なったり、インディペンデントで制作を続ける箱庭世界。どちらも、共通する哀しい傾向があります。
「カネの話題に終始してしまう」
弁護士達は、市場調査をし、ターゲットに対して効果的広告を打ち、予測される回収はどれだけか。肝心な、自分の取り分は?
インディペンデントは、純情です。いかにそのコンテンツが価値あるものか、その権利関係を整理し、事務処理にどれ程労力をさいているかを訴え、値段の妥当性を主張し、時折声が大きくなり過ぎてしまう。
そんなの関係ないリスナーに少々厭味に取られたとしても、後者は私は支持します。通じない言葉を話していても、音楽に愛は、あるでしょう。前者は、どうだろう。
私が心配しているのは、彼等のことです。もうビジネスでなくなってしまう音楽出版の仕事を無くした彼等は、音楽を聴くのか…。音楽を愛するのか…。
さて、電子データは活性化するかも。何故無料になってしまうかというと、コストがそもそも低いからです。無料でも活性化するのなら、そこに音楽世界の住人が移り住むのは当然の成り行きでしょう。そこには権利もへったくれもない。ノーコストで、共有する喜びだけを動機に、みんなが出来ちゃうんだから、活性化して当然。
たにふじは、音楽の作家性というもんがとてもスキです。曲の細部の佇まいに、作家の気配を読み取ります。勿論、お金が無いとやってけない。だから、一寸くらいはお金を払って貰える様に、その作家性だけでなく、パフォーマンスにも、理論武装にも、みんなに喜んで貰えるもの、或いは、
「自分ならお金払うね」
と言えるものを作ろうとあがきます。
自分なら、どうするか。
最近、自宅で何となくiTunesのネットラジオをかけている時間が多くなりました。バンマスゆーこさんに教えたら、彼女も早速ハマッて、家事の時などはかけっ放しにしていると、先日当blogにもありました通りです。パット・メセニーは、バンドメンバーのトランペッターを、このネットラジオで聴き、なんとマンハッタンの電話帳で見つけてかけたんだそうです。最近話題になった例で、ジャーニーの新ヴォーカリストがYouTubeでスカウトされたとか。こんな音楽配信の話を聴くと、有線の業界は、これはかなり斜陽ではないか。電子化されたらきっと音楽の再生回数などは管理が容易になり、JASRACのどんぶり勘定に頼らなくとも厳密な使用料の測定が出来る。そうなると、有線は強みが増すかなと予想したのですが、どうやらエンドユーザーにとっては、無料化の波の方がパワフル。
レコーディングは、デジタルの中で行われ、常に複製の危機下に。レコーディングでしか作れない世界であっても。
どうすればいいと想いますか?
私は、おそらく、「オリジナルのスタンプを押し続ける」しか無いと想うのです。愚直な愛、ですね。