小理屈「いやカタいのなんの」

武満徹なう、「現代」音楽

日本を代表する作曲家、武満徹さんが亡くなった1996年頃、社会派評論家の立花隆さんが、「文学界」という堅い雑誌に、武満徹伝の様なものを連載していました。ちらっと立ち読みしたことがあるのですが、眼に飛び込んできたのが、ピアニストの高橋悠治さんがグリッサンドをクールに決めたその時、鍵盤に赤い血の痕が走った…、などという、もう強烈にかっこいい場面。これは是非単行本でまとめて読みたい、そう想った私はそこで本を閉じたのですが、それが運の尽き。程無く武満さんが亡くなり、すぐにNHK教育TVで立花さんが追悼番組を放送したのです。
しかし、「文学界」の連載は、それっきり中断してしまった。残念です。
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ジョン・ケージがクラシックの範疇なのか、判然としないですが、私にとってずっと不可思議な言葉としてあるのが、クラシックとしての「現代音楽」です。現代でクラシック。なんだそれは?まあでも、クラシックというのがクラシックなことをさす訳ではなく、クラシックというジャンルがあるだけで、クラシックな訳じゃないんだと理解したとしましょう(わざとぐちゃぐちゃに語っております)。しかし、現代音楽って、英語圏だとコンテンポラリー・ミュージックだったりして、もう言葉の雰囲気がポップ過ぎる。
N.Y.コロンビア大学で現代音楽の研究生と知り合いました。彼に取材した時、今から想うと非常に失礼な質問をしてしまったことがあります。
「現代音楽ってどんな需要と供給がある世界なんですか?」
彼は残念そうに、大学に残って教員になるか学者になるしかない、と答えてくれました。要するに、楽譜が売れまくったりCDがミリオンセラーになったりすることは、ないんですね。
武満さんは、少なくとも1959年にストラビンスキーに絶賛されて以来、現代音楽の作家としては恐らく世界的にも「成功」した人物の一人です。ミニマリズム系の作家は比較的安定していた気配がありますが、かのジョン・ケージでさえ、生活は楽でなかったと言われるほど。では武満さんが何故「成功」出来たのか。

いやいや、実は私は、武満さんが「成功」したのかどうか、テキトーに語ってます実は。ただ、どの国のCDショップでも、武満さんの作品があります。バーンスタインはじめ世界中のクラシック界の重要な人物、オーケストラが彼に作品を依頼し、しかしあまりにも独創的な作風ゆえ、演奏出来る環境は非常に限られている。そして、その中で武満さんはスターで、誰もが一目置かずにいられない。極め付けは、なんつったって「賛否両論」ぶりです。かっこいい!
映画音楽も沢山の実験作、傑作を残し、JAZZやポップスの畑でも尊敬され、TVの音楽番組でも、時折りあのマンガみたいな風貌で飄々と冗談をかました。
バロックでも、ロマン派でも、今日まで名前や作品が語られるのは、どのくらいなんだろう。果たしてバッハの当時バロックを書ける教養がある作曲家が100人もいたかどうか。ましてや時を経ても名前が残るなんて、相当にレアだ。
そうなると、現代の音楽家で残るのは?なんて設問、関心あるでしょ皆さま。The Beatles、Miles Davis、Stevie Wonder、Michael Jackson、そして、武満徹…。その時に、今でもまだ大方の人は、このポピュラーミュージックのリストの中にストラビンスキーや武満徹が混ざることに違和感を感じる人は多いでしょう。しかし、ハウス・ミュージックの語法は今や普通にお茶の間に溢れ(安室奈美恵なども)、行ったっきり帰ってこないビートは同時にビートの無い時間も等価化していく。インド音楽に影響を受けた現代音楽などは、その両端にあるのですから。そう、もう一寸ですよきっと。もう一寸で、タケミツもビートルズもおんなじになりますって。で、叶うならその勢いでバッハとタケミツも繋いで行きたいと、呑気なリスナーで偏狭のクリエイターたにふじは想うのです。

まずは、「現代」の音楽をクールに聴くミミを持とう。冒頭の、ポーカーフェイス高橋悠治の血しぶき、惚れちゃうでしょやっぱ。

一度だけ生タケミツを観たことがあります。
80年代、西東京の野外音楽フェス。民族音楽も含めたガラ・コンサートの主旨に賛同した武満さんは、特別にファンファーレを書下ろした。司会者がそう説明すると、会場がどよめく。武満徹が来てるなんて、ハプニングだ。ラッキー。
なんとコンサートの白地のTシャツを来たETの様な武満さんが、ぴょこぴょこと客席からステージに向かって走っていく。なんちゅうおっさんだ。ステージに上がり、挨拶。そして、ファンファーレが演奏される。
パンパカパーンとは凡そかけ離れた、しかし名をつけるならファンファーレとしか言いようの無いファンファーレは、風に乗りながら、風を虜にし、明確なメロディーなどを歌うことも無く、しかし美しかった。

ところで、現代音楽の100年、最大の1歩は皆さま主観では何だと想います?
私は、「エレキギター」だと想ってるんです。エレキギターの周辺で起こった出来事が、一番大きかったのでは、と。
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by momayucue | 2010-12-31 16:00 | 小理屈「いやカタいのなんの」 | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


by momayucue
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