AOR,熱烈お勧め

AOR,熱烈お薦め Bop Til You Drop/ライ・クーダー

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Ry Cooder
ライ・クーダー

邦題は「バップ・ドロップ・デラックス」と、ゴロといい語感の華々しさといい、めちゃくちゃ素敵なアルバム。

ライクーダーは、私が最も好きなギター奏者であり、トータルな音楽家としても尊敬する人物。アメリカのみならず世界のルーツ音楽に眼を向け、大概の音楽ジャンルを(テクノさえも)咀嚼し、あくまでも自分のやり方で取り入れて演奏する。そして、バーバンクも、デルタ・ブルースも、オールド・ジャズの実験も、フォークも、R&Bも、ミュージック・コンクレートも、彼の手がけたものは、風化しない。本人は"JAZZ"の様なアルバムは失敗作だと発言したりもしていますが、大方のライ・ファンはそう感じていない。ツウであればある程、「そこが良いんだよ!」と言い出しそうです。
バーバンク期、ブルース期、サントラ期、キューバ期、それぞれ想い入れは違うのでしょうが、彼のアルバムは皆評価が高く、それらを愛してやまないリスナーに恵まれています。
しかし、どうにも分の悪いアルバムがひとつあります。それが、"Bop Til You Drop"です。

誰にとっても不評なのかどうか、そこが微妙なところなのですが、所謂大向う、と言うのか、コアなライのファン、音楽愛好家の間ではずっと語られているある問題があります。
その問題とは…(ビフォーアフター風に)。

リリースは1979年。日本ではイエロー・マジック・オーケストラが席巻し、世界を見渡しても、これ迄何処にもない本当の意味で斬新な音楽の時代が来ました。サンプリング等の技術が導入されていくのはCD普及後ですが、CDの発想の基盤となっているデジタルによる録音は、SONYが1978年に市場に出しています。そして、ポップ・ミュージックの分野、更に言えば商業音楽のデジタル・レコーディング第1号が、この紫のアルバムです。
しかし、ライ・クーダーの研究者としては、私は彼が世界ナンバーワンだと尊敬するレシーブ二郎さんのレビューも勿論、Amazonでの評価も、
「音が頼りない…」
「デジタル黎明期の線の細さが…」
「低音が…」
「生楽器が…」
音質について散々言われているんです。

私がライ・クーダーを揃え出したのは次作「スライド天国」からですが(これも邦題がコキゲンですなあ)、パイオニアのCMで"Go Home Girl"を聴いてすっかり参ってしまったのがきっかけの身ですから、実質"Bop Till You Drop"が滑り出しでしょう。カントリーの系譜がもしかすると自分の肌に合うのかも!と勘違いした私は、その他様々な影響でカントリーに手を出し、あの孤独感はライの持つ「黒っぽさ」から来ていたのだと気付く迄、長い事うろうろと捜し回っていたのです。
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私は、この音が実は好きです。線が細い…のかも知れませんが、ボリュームを上げると感じられる当時のデジタル特有な歪みは、ディヴィッド・リンドレーのスライドを優しくするし、スカのリズムを取り入れたアレンジも、本当に丁度いいエコー感でしなります。音の輪郭が明確なのもR&Bのスタイルで冴えるヴォイシングを際立たせるし、曲の大人っぽさに合う。
チャカ・カーンというスター・シンガーがライとデュエットを。
アルバムラストの曲では、
「あたしは、あなたの愛には敵わないわ」
と切なくしっとりと歌う。ギターのソロも素敵。パワフルな女性ヴォーカルに対し、ライは決してマッチョなシンガーではない。双方の良さを最良の形でブレンドさせようとしたら、現代のエンジニアでもきっとこんなサウンドに仕上げるんじゃないかな。私は、不満なんて無いです。寧ろ、こうして熱烈にお薦めしちゃう。

黒っぽさ…、と書きました。そう、音楽の黒さと、分離の良さで引き立つ粋な音使いと、酸いも甘いも噛み分けたアレンジの妙。片岡義男さんの短編小説の様な、青臭い大人の孤独を感じさせる。そんな意味で、このアルバムは、ぼくにとっては最良のAORのひとつです。

もしも史上初のデジタル録音がエアプレイのアルバムだったら、TOTOだったら、どう評価されていたでしょう。
翌年にはロジャー・ニコルスというレコーディング・エンジニアが、なんと自らアセンブラを駆使してサンプリングを用いたアルバムを制作します。スティーリー・ダンの「ガウチョ」です。そして1982年にドナルド・フェイゲンがデジタルでアルバム制作をし、大ヒットとなりました。まだまだ課題の多い時代のデジタル録音でしたが(今でも、という声が聞こえそう)、後出のアルバムに、デジタルの線の細さを訴える声は、それ程多くない。
どんなフォーマットであれ、どう聴いても、別に構わない。ライはおそらくAORなんて言葉も知らないでしょうが、それは、私の問題ではない。

実は、べつに誰の問題でもないのでは?
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by momayucue | 2012-02-17 00:15 | AOR,熱烈お勧め | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


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