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AOR,熱烈お勧め

AOR,熱烈お薦め Lady Good/丸山圭子

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丸山圭子
まるやまけいこ


AOR熱烈お薦め史上(ったってそんなに数ないけど)初の日本人登場。しかも、女性なのでした。
情報通の多い世界なので、どうしても掘り起しモードになってしまいます。今更スティーリー・ダンとかTOTOとかあげてもでしょうし、しかしきっちりとAORとして成立しているものをお薦めたいじゃありませんか。半端なニュー・ミュージックでいいという方は、よそに膨大なデータベースもありますしね(わぉ、挑戦的)。

では、今日の丸山圭子さんは、どうでしょうね。
一般的には、1976年の「どうぞこのまま」のヒットで知られるシンガー・ソングライター。アンニュイな、歌謡ボサノバよりは幾分Bossaテイスト強めなこの曲を、多分ずば抜けたセンスの曲として皆が受け入れたのではないでしょうか。
しかし、彼女のセンスは、こんなものでは終わらなかった。本領発揮は、"Lady Good"です。

1983年。当時リットーミュージックから発刊されたばかりの、「サウンド&レコーディング・マガジン」という雑誌。ギターやキーボードの雑誌に比べて、断然専門色の強い紙面には、何しろ一般の私達が触れることが出来ない高額なシンセサイザーやミキシング・コンソール、デジタル・ディレイ等の機材が満載。そして、他の雑誌には登場しない、エンジニアやプロデューサーのインタビューやノウハウ。そこで、年末の企画として、「製作者が選ぶ、今年関わった印象的なアルバム」がありました。
「Lady Good/丸山圭子」。だれが挙げていたのかも憶えていないので
すが、少なくともたった独りだけが、これを推していました。もっと話題性のあるYMOやジャズ・フュージョンの中でいささか浮いてましたが、却って誇らしげというか、選者の強い意志を感じさせたのでしょう。それだけを頼りに、私はアルバムを注文したんです。
リアルタイムでは、雑誌でもTVでもラジオでも、このアルバムに関するパブリシティーは一回こっきり、そのサンレコで見かけただけでした。アルバム最後の曲はどうやらドラマの挿入歌に使われた(ガラスの森)らしいのに、殆ど話題にならない。しかし、私はこのアルバムを聴いてから、かなり驚いたのです。少し前に寺尾聡さんのモンスター・ヒットもあり、もっともっとアダルトを掘り下げたいリスナーも多かったでしょうに、一体何故…。まあ、芸能界ですので様々な力学もあるのだと勘ぐりたくもなります。

アルバムの何にたにふじが驚いたのか。ニューミュージック風な処で着地しない本物感が全体に漲っていた。センスのあるメロディとコードの流れ。かっこいい大人の女性を地で行く歌唱と歌詞。過不足ないしっとりとしたアレンジと演奏。禁句ですが、
「こんなに本物っぽかったら、売れないよなあ…」
とため息もつきたいくらい。
しかし、アナログ盤の当時も、一旦CD化された今も、アルバムの情報が極端に少ない。ミュージシャンのクレジットどころか、アレンジャーの名前さえ無いんです。このギターは今剛だな、とかこのプロフェット・ソロは佐藤準なのかな…と予想するも、確証無し。サウンド・プロデューサーというクレジットがあります。それだけ。佐藤準さんと結婚してたのと、その後の今井美樹さんやおニャン子の仕事を聴いても、サウンドに佐藤さんと符合するところは少なくない。しかし、少ないクレジットには、サウンドなんちゃらという一寸めんどくさい表記。で、そこには「小笠原寛」という名前が。
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誰?この方は当時他のクレジットに見かけた事が全くない。しかしこのテキストを書く為に調べてみたところ、現在は、手使海ユトロというペンネームで活動されている、しかも華々しく。「テシカイユトロ」なんと、「世界ウルルン〜」などの音楽を作り、TVの音楽や癒し系モノではビッグネームになっています。

にしても、今回の主人公たるアルバムの情報としては足りない。正直なところ、突出しているとさえ想えるクオリティです。誰が、何を企んだ?

クレジットの無い演奏者達は、間違いなく当時の一流メンバーだったでしょう。バジェットがどうだったのかは流石に判りませんが、想いっきりやりたい音楽をやったのではないでしょうか。普通ならもう少しお茶の間に浸透しそうな着地点を目指すのに、ニッポンをなめんなよとばかりに振り切ったお洒落なプロダクション。キメテる女性像の歌詞だけは一寸ステレオタイプかなと感じないでもないですが、彼女の書いている曲が、全てを牽引している。
鉄壁のAORです。

しかし、強くプッシュしたいのはやまやまなのですが、入手は困難みたいです。他のアルバムは紙ジャケになったり、ベスト盤などもありますが、何となく時代によってその洗練さ加減に差がありそう。ベスト盤とはそういうものですから、それも含めて楽しむしかないですけどね。

パワフルなメッセージソングが必要な時代。音楽に文学を求めるのも、真っ当なひとつの理由です。しかし、高熱じゃない微熱があってこその生活であり、音楽。
そんな訳で、本気度の只事でないこのアルバムに、いつか燦々と日差しが当たりますように…。
by momayucue | 2012-02-29 23:30 | AOR,熱烈お勧め | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


by momayucue
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