小理屈「いやカタいのなんの」

小さなオーケストラがスコアの中の巨大な1パーツになるまで

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ギターを、作曲家の武満徹さんは、「小さなオーケストラ」と呼びました。武満さんはあの複雑で不自由な楽器の為の作曲や編曲を、どうやってしたのか全く解らないのですが、数多く残しています。ご自分で演奏したのかどうか、彼はギターをとても愛していたらしく、70年代から、意欲的な若手演奏者と組んで、現代も世界中で再演される名曲・名編曲の数々をものしている。作曲の手助けになる程度には弾けたのかしら。
しかし一方で、
「いささか疲弊したクラシック・ギター界に、新しい風を吹き込みたい」
と発言もしています。武満さんがいなかったら、もう少しクラシック・ギター界の硬直期は長かったのかも知れません。

なあんて、今日のお題は、アコースティックではなく、エレキギター。

寺内タケシさん(1939年生)は「俺がエレキギターを発明した!」と豪語してますが(実際自力で作ったのかも)、最初の電気的に音を増幅するギターは、米国のGeorge Beauchampによって1931年に開発されました。例えばヴァイオリンは、大編成と単独で渡り合う協奏曲に必要な音量を、もともと持っています。PA(マイク、アンプ、スピーカーです)がコンサートに用いられる以前から、勿論ピアノも、またトランペット等の管楽器も、肉声さえも、一応の音量を備えていました。しかしギターは…、電気によって増幅される時代を迎える迄そうしたことはかなり困難でした。エレキギターは、それを原理的に可能にした。

たった独りで、幾らでも大音量が出せるようになったのです。

そして、大音量と、エフェクトという手法を得たエレキギターの快進撃は、硬軟取り混ぜて凄まじかった。

ポータビリティ。
たとえケーブルに繋がれていたとしても、マイク・スタンド前よりも遥かに自由だ。ある意味ケーブルを引きずってステージを歩き回ることは、ファッションにさえなる。小さくても和音が出せる。
ストロークというカタルシス。
ピート・タウンゼントというWHOのギタリストは、独特のスタイルやジャンプでポーズをキメた。キース・リチャーズは、下手なことをひとつのアートにしてしまった。
加えて、リフという文化。
ギターがシンプルなフレーズを延々繰り返す上で音楽の構造が変化したり重層化することで、3分の中にかつて無いドラマが生じた。しかも単純化されただけではなくそれを40分のアルバムに13曲入れることで「コンセプト」が生まれた。

コードという概念は、それ迄、音楽家としての詩人を成立たらしめていたのを、エレキギターに持ち替えてみたら、言ってみれば草食系から肉食系に変われたのかも知れません。
ボブ・ディランからボブ・マーリーへ。
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武満さんを魅了した、複雑な和声と不自由な構造。しかし、とっつき易く親しみのある楽器だからこそ、エレクトリックを得られた。
そして様々な楽器が感化され、ギターリフを真似る時代の呼び水となっていったのです。スティーヴィー・ワンダーがクラビネットをギターリフの様にファンキーに効かせたり、ホーン・セクションもリズムの隙間にキラッというフレーズを効かせたり。
雑音だった筈のフィードバック奏法(ジミヘン)。しかも楽器に火をつけて燃やすパフォーマンス。ノイズを音楽と感じる。そしてエフェクターによるギターの音色拡張は、そのままレコーディング技術や、アンビエント・ミュージックの発展の契機となったのではないか、と私は振り返っています。つまり、エレキギターという突然変異が、録音された音像の特殊性に加担し技術の向上への橋渡しをし、シンセサイザーやハイファイ、ローファイを含めた、言わば機材を楽器とする解釈(ヒップホップ)や、です。

エフェクトから音像の変化、楽音の多様化、環境音楽の一般化。これらは、私が知る限りこれ迄は、それぞれ電子音楽、放送用の効果音、近代から現代音楽の視点で論じられています。誰もルーツがエレキギターだなんて言わない。しかし、エレキギターが貢献した領域は、ロックンロール、ジャズから始まり、濃淡はあれど音楽のほぼ全域に浸透したことは、理解を得易いのではないでしょうか。
そして、20世紀に音楽が商業化される変遷のまさしく核で大暴れし、何もかもがあの幼稚でデリケートで不確定要素の多いガジェット楽器に刺激されていました。古典的な音楽に新風を吹き込み、音響、環境音にも、影響を与えています。シンセや打ち込みは使うのにギターはもっぱらアコースティックの私でも、強く感じます。


小さなオーケストラだったアコースティック楽器が、電気を纏ったら、オーケストラとは少し違うコンボの巨大な1パーツを担い、バンドを決定づけ、そして、音楽の領域を拡張し、入れ物をぶち壊す爽快さを世界中の思春期のガキどもに教えました。
爽快にぶち壊されたのは、音楽に留まらず、スタイル、ファッション、思想、アート、行動、ナンパ、全てです。

あれ程攻撃的なのに、戦争以外の全て、でした。楽器は戦争に使えないんです。こんなに歴史の若いエレキギターであっても。


しかし若さは、そういう凶暴なパワーを持っているんだと、想います。

今日の写真は、大村憲司のものです。
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by momayucue | 2012-06-26 23:08 | 小理屈「いやカタいのなんの」 | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


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