今日のはげみ

今日のはげみ039 熱烈なラブレターを、「大野更紗」女史(女子)へ

d0041508_13351733.jpg

「困ってるひと」/大野更紗

この本が気になっていたのは、恐らくぼく自身も、「困っていた」からだと想う。
いや、違う。ぼく自身の気になり方が、ぼくなりの「困ってる」を抱えていて、それの脆さや、他人にとってのどうでも良さや、自分の解ってなさに、微かに、本当にかろうじて触れていたのだと想います。
でもそんなことは、どうでもいい。

Amazonや、多くの書評で、様々な人が賛否両論を展開しています。文体や、わたしわたしに辟易や、甘ったれや、それから、これからこの文の最後に書くことに対するある種の美しい羨望を肴に。いきがかり上、それらに反論したい。何故ならばぼくは今ここに、彼女へのLove Letterを書いているのだから。
よって、この本や、世間の評判を知らない人には伝わりにくい文であることを、はじめにおことわりしておきまぁ〜す。



ぼくは、難病でも何でもない、歯並び以外にはこっぴどい所も無い、不満なんてたいそうな事を言えない者です。家族に特定疾患の、所謂、官指定の難病患者はいますが、それでも彼女の境遇に比較は出来ない。

但し、…。
以下に展開ッ!

彼女の文体には何ら不快感を感じないし、内容が内容なだけに笑うわけにもいかないですが、ノッて読めました。ノレなかったAmazonの感想書いた各位、お気の毒さま、ぼくはノッたんだ。因みに、49歳ですが。
それから随所での、彼女自身の、自分の感情への嫌悪感にも共感を持っています。初めて訪れた重度の障害者専門の病院。恥ずかしいことに…とことわって書いているのに、
「おまえ恥ずかしいよ!」
と追い打ちかけるAmazon的趣味は、ぼくには微塵もない。もっと言ってしまえば、そう素直に想った人は、他にも大勢いるだろうし、ぼくもそうだったかも知れないし、それらの人に対して、
「私たち、自分が恥ずかしいね…」
と身を寄せてくれている、それが大野さんというヒロインだ。
クマちゃんへの「ミス指摘」。診療の後にドアの外での看護師とのふとした会話が、本人に聞こえて、彼女が傷付くくだり。これも、クマ先生への好意から書いている、とてもとても切ないドラマだと想う。人類は陰口が好きらしい。ゴシップ雑誌的な自分へのなにがしかを陰でどっさり聞いてしまった病人や関係者は、そんなもんで甘いと想うかも知れないけれど、言われた最初っから甘いとは感じなかった筈だし、今もって大野さんが同じように毎回動揺しているかと言うと、多分違う。つまり、彼女は初心を忘れない為に、初心で初診の患者を代弁して書いている。誰もがパパ先生にそうだそうだとベクトルを併せられるわけでもないでしょう。誰だってまず初心者になるんだ。あ、生まれつきの方は?成程、それは初心者を「差別」出来るかも。しかし、ぼくはしない。
ビルマのこと。彼女が一貫してビルマと呼んでいるのは、タイの隣のその国の国民は、選挙で、ミャンマーなどという政権を選択していないからだ。それはヒロイズムかも知れないが、ぼくは、ヒロイズムの人間だ。誰だって清濁併せ呑む。TPOが違うけれど、彼女の青さはぼくの青さと同じだ。もう青くない人は、世界各国の代表のように現状の政権を肯定してくのだろうけれど、ぼくはしない。
記述の事実誤認を論う人もいるみたいね。うちの職場にもいる。困らせるひと。ぼく自身も多分得意分野の持論を展開し始めたら、誰かを困らせるひとになるかも知れない。そういう事にはそういう時にはそういう人は、盲目だ。ぼくもそうだ。
一応、「盲目」という言葉を敢えて使ってみた。ぼくはこのテの比喩を撲滅すべきではないと考えているんです。為末さんが、
「いやあそれはハードル高いですねえ」
というギャグを言って欲しいとかも想っているんです。

反論は一段落。ここから、しばしストーリーと感想を。

比較的社会に対して真面目で、現代っ子で、かわいくアクティビティストをしていた学生更紗が、タイで、健康を壊す。どうにもならない1年。漸く巡り巡って自分を受け入れてくれる病院に辿り着く。知らなかった世界と、知っていた世界の変容と、内面の変化に基づく視点の変化。そして屈していながらも不屈のアクティビティスト魂(女子)。
症状は入院後も悪化していく。彼女の行動は、友人の人脈をコクシして立ち向かい、医師に泣きつき、落胆し、制度に関する情報収集をする。そして、彼女がこういった「困ってるひと」の中で少しだけ抜きん出ていたとしたら、e-mobileで情報収集をしたことでしょう。ジョージャクではなかった。
自活しなくては。自分の為に。アクティビティスト女子なのだから、それを多くの初心者達に初心者として伝えるのが、大野さんのアクティビティストたるところ。
そしてやがて、彼女は…。

当たり前だが、本気で笑える程のギャグは書いてない。このテーマでそれはイカンことくらい、彼女はわかるに決まっている。ただ、自分のノリを軽くする為にこの文体を選択している。もうその気遣いたるや胸が痛みます。
しかし、ここにひとつ、胸が痛む物語がある。恋心、だ。

一寸だけ話が逸れます。
五体不満足な、乙武さん。彼は、スポーツ好きで朗らかで、多くの人に愛された。しかしふと振り返るとね、ぼくには恐ろしい仮説があるんです。もしも彼が、ハンサムでなかったら、彼の人生の物語はいささか形が変わっていたのではないか。ホーキング何とかというハンディキャップのコメディアンが、乙武さんを随分と肴にネタを展開していた時期がある。彼は乙武さんを裏切者と呼ばわっていたが、近年、
「共闘しているんだよ、俺にも彼にもはじめからそれはわかってるんだ。言葉は要らないんだ」
と、そもそもデキレースであることを公言している。ホーキングなんとかさんは、ゴシップ雑誌側から生き延びる道を選んだけれど、やり方は同じなんだ。乙ちゃんはみんなに愛され、ホーさんはやっかみキャラで切り開いた。
そして、ハンディキャップの多くの人には、そんな特技も、パラリンピックのチャンスもない。

閑話休題。戻ります。大野更紗さん、恋をしたらしい。一度封印した恋を、したのだ。出来たのだ。
わかります?みなさん。彼女の写真は世間に幾らか出ていますが、はっきり言いますと、絶対にあのマスクの下の彼女は、可愛いんだよ!だから恋をする男も出てくるんだよ!
そういう意味では、大野更紗は、優位性がある乙ちゃんサイドの女子だった。なんだよ、変形しまくってもはやチャレンジド(英語圏では身障者のことをこう呼ぶのがトレンドらしく…)の中でもフリークスにしかなれない連中ならシンパシーもあるしひねくれも受容出来るけどよ、結局モテないオレとはアタイとは違うんじゃん!
…という、ハンディのある人ない人からの反発が、何となく予想出来る。普通に恋愛に憧れるだけの女子が普通の恋愛の物語に共感しても、或いは普通の恋愛を諦めたらしきチャレンジドの方が普通の恋愛の物語に共感しても、もしかすると、彼女はそのどちらから見ても裏切者なのではないだろうか。

…、物凄くうがった意見って言うか、これだけだと何だかまたAmazonの言いがかり人種みたいになりそうだ。しかし、ぼくは違った。

ぼくは、大野更紗さんが、大好きになった。

彼女の、かわいいアクティビティストっぷりに、すっかりやられました。惚れました。ストーカーにはならないよ
うに自制しますけど、いつか著書にサイン貰いたい。きつく握らないようにするから、握手して欲しい。多分ぼくは両手でするけど、許して欲しい。


そして、これからぼくが一般のヒト、つまり何かのハンディの予備軍であるヒトとして向かうところが、小さな困ったでも、巨大な困ったでも、N.Y.でもビルマでもオゾン層の壊れた南極でも原子力発電を再稼働する馬鹿げた政府の国でも、ぼくは、弱い人達や弱い心達を好きでいるだろうと想います。どうしても、迷う人達を憎むことは出来ないだろうと想います。
[PR]
by momayucue | 2012-09-29 13:35 | 今日のはげみ | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


by momayucue
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30