つれづれ

Sunken Condos/ドナルド・フェイゲン

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幸福に苦しむ、たにぴ@もまゆきゅです。

硬質AOR、と店頭のPOPに書いて紹介したのは、TOWER RECORDS。
対象は、
Donald Fagen の新作

AORのくくりで軟質がどれなのか、他にどんな喩え方をすればいいのか、
一寸興味深い。
BISHは?エアプレイは?マイケル・フランクスは?
どんなAORでしょう。

今回も何かとファンが喧しい、Donald Fagenの、スティーリー・ダン直系のアルバム。
ぼくは、例えば音質についてAjaやGauchoに、
このアルバムが劣っているとは想えない。
っていうかさ、音質がどうのとか、最近みんな言い過ぎ。
ぼくはそんなことは寧ろ、
The Royal Scam の前後で切り分ける方が明確だと想うし、
音楽性の飛躍にしても、「硬質さ」において、
The Royal Scam を境にしている気がする。
多くのダン・ファンがそう感じているであろう、まさに、
あの時期に、何かが起こった。
老成も、無邪気さも、強烈なビーバップのテイストも、
伝説とそれに対する沈黙ぶりも、
ぼくは、とりわけドナルドに、一徹さと音楽ファン気質を嗅ぎ取る。
Ajaに関する本も丁度最近刊行されているけれど、
PegでのギターソロにOKを出すまでの顛末について、
※一応解説などしておこうかな。
 OKテイクに徹底的に拘り続け、
 大物を9人もとっかえひっかえしたあげくに、
 ジェイ・グレイドンがあのヘンテコなソロをキメた。
「まずウォルターがやった。私はOKだと想ったのだが、
彼は何か気に入らず、それでは、ロベン・フォードで決まりだろう、となった。
しかし、ブルースに長けていた彼も、何か強ばったのか、
とあるコードで躓く。そこから、あの通りおかしなことになったんだ」
よく彼等は一流ミュージシャンだろうと何だろうと、
徹底的に現場主義で使い倒すと言われるけれど、
どうもニュアンスが違う。彼の言葉からは、
個々の演奏者に対するきちんとした尊敬がくみ取れる。
「たったこれだけの為にこんなに金をかけるなんて、馬鹿げてる…」
と感じながらも、もはや自分でも止まらないウォルターとドナルド。
「やばいよこれは…」
みたいな。

しかし、まぎれもない硬質なAOR。

アルバムタイトルのひねくれ具合も、
コードやコーラスや全てのカウンターラインも、
ひと廻りしたロマンに基づいている。
普通なら、深海に沈んだコンドミニアムなんて表現はしない。
ホテルとか、城とか言うじゃない。それを、
何故かコンドミニアムにする。
その捻り技も、全てがちゃんと一貫して「らしさ」に奉仕している。
ブライトな短いリバーブは、まさしくコンセプトに奉仕。
ハーモニカのソロが多用されているのも、深海だから。
コンドミニアムなのは、生活がそこにあったから。

今は、誰もいない。
さて、これからどうする?

文学的事柄はさておき、音楽の方はどうかと見渡すと、
ウッドベースの登場と、サックス系の管セクションと、
シングルトーンでのギターのバッキング。
キース・カーロックの様なパワフルなプレイは敢えて避けて、
まさしく深海なドラム。
ヒヤリ。でも、

まぎれもない硬質なAOR。

人類が(仮に)どう理知的に立ち回ろうが、
文明社会なんて自然現象であっさり海の底に沈む。
砂上の楼閣。カマキリアドで落ち着き払ってサバイバル。
多分その時も、幸福とはある種の比較による優劣が指針になっているだろう。
徳の高いお坊さんでも、名誉だけは枯れなかったらしい。
その時、ひとは、何処迄もなりゆきまかせに出来るものだろうか。
「フェイゲンも歳をとったな」
と憂いて、何とか同等な立脚点にいる振りをしたがるダン・ファン。
音楽家は、スキルとノウハウと才能と理想を総動員して、
彼等に作品をちらつかせつつ(全貌なんて個人に見えるものじゃない)、
自分のみが比較しうる作品を完結させる。
有り難いファンの方々は、まあ何を出してもそれなりにケチつけたり楽しんだりするだろ、
それに口を挟むのも華麗にスルーするのも、これから考えるさ。

ぼくは、ドナルドの様になれない。
自分の倖せを喜ばない。
誰かの顔色を見て、反対側を見て、また振り返って、…。
沈んだコンドミニアムの住人は、アコースティック・ジャズの夢を見るか。
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by momayucue | 2012-11-11 19:19 | つれづれ | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


by momayucue
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