AOR,熱烈お勧め

AOR 熱烈お勧め The Man With The Horn/マイルス・ディヴィス

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Miles Davis
マイルス・ディヴィス

Jazz界の、そして商業音楽界の、人類の音楽界の、巨人中の巨人。BE-BOP以降に本格的に登場し、モードというある意味ブルースの自己弁護(これはたにふじの理論ね)のような手法を用いて、アフロ音楽を脱構築し再構築した。
いやあ、何というかマイルスに対しては、何をどう言っても、
「くう〜っ!」
という言葉に勝てる気がしませんな。本人はもしかすると、かっこよく見せるという以上の音楽的目的は無かった…皆無だった、のかも。確信に満ちた最小限のトーン。カップミュート。独特の屈んだポーズでの演奏は、時に観客に背を向けっぱなし。批判もあったらしいけれど、一寸事情が判った人間には、それら全てがたまらなくカッコ良かった。

私が10代のこわっぱだった頃、薬物なのか何なのか暫く音沙汰の無かったマイルスが、どうやら復帰するらしい…と、やけに仰々しい勢いで噂が流れてきました。よく知らないけれど大物が久々にアルバムを出すらしい。たにふじはチェックしたんです。

消える前の時期は、電化マイルスと呼ばれ、パーラメントやJB型のファンクのノリをがっつり取り入れて、殆どスクエアなジャズファンには却って難解なサウンドになってしまい、そこがまた彼らしかったんです。そういうミュージシャンの新作に対する評価って、だいたい決まっているでしょう。
「もう終わった」
です。当然、それは始まりに過ぎないのにね。
しかし、この復帰作への嫌がらせは、想わず苦笑しちゃいそうな程でした。
「譜面通りだ(何処がだかさっぱわからん)」
「腑抜けな音だ(それトレードマークですから)」
「電化時代から後退した(前進とか後退とか…横だと偉いのかい?)」
ガキ真っ盛りだった当時の私には、その言葉のひとつひとつが、
「オレはマイルスを最も理解していて、今は情けないんだヨ」
と訴えているだけで、まあぼくには関係ないな…と、若干は影響されつつ眺めてたんです。
がっ…。

逆もまた真なり。あまりにも解り易いと一寸馬鹿にされた気分にもなり、売れ線だなんだとくさしてみたくなる。こんなものはレコード会社の戦略に過ぎない…的な。だってさ、マイルスウォッチャーでもコレクターでもない私の情報源にしてみたら、こんなゲスト・ヴォーカルがどどーんと入ったものなんて、それ迄無かったもの。
その詳細は以下に…。

バックシート・ベティなんていかしたタイトルの、最小限の約束で出来た曲は、もうホントにリムジンの後部座席にブロンドがいる姿がしっくりきまくり。ファット・タイムでの、マイク・スターンのいかにもジャズ畑のプレイヤーがロックをやったぜ風な素晴らしいギターソロ。マーカス・ミラーの、何処に出しても恥ずかしくないスラップの支える、全体にラフの極みなサウンド。
しかし、どうも毛色が違う曲が2つ。
ひとつは、フュージョンっぽいインスト。ひとつは、サンタナとブラコンの中間みたいな、歌モノ。しかも歌モノは、アルバム・タイトル曲ときてる。

トランペットの男…。

ランディ・ホールという、それなりの成果を持っているものの、マイルスと対峙するのにはいい塩梅に小粒なシンガーが、タイトル曲を歌った。先に記した、「サンタナとブラコンの中間みたいな歌モノ」のことです。
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AORというジャンルの中では、比較的きっちりとしたおとなしいけれど音楽性は高度なロックという説明が成り立つ他に、特徴があります。JAZZの教養がある、メロウなサウンド。ど真ん中のジャズに眼が向いていたかどうかは、かなり怪しいのですが、AOR系列のミュージシャンがジャズのビッグネームと共演したりすると、ある種のステイタスになります。お墨付き、の様な。なのにそこに不思議な穴が出来て、両方の視線が交わったあげく譲り合う。渡辺貞夫さんの "My Dear Life"という曲があります。ランディ・クロフォードが歌った、AORの名曲のひとつです。しかし、それはまだ認知されている方だ。何故なら、ナベサダさんはまだベーシックにメロウなフュージョンの引き出しがあったから。しかし、マイルスは、とてもとてもその筋にウケる音楽を作っては来なかった。例えばTOTOのアルバムにゲスト参加して、TOTOの株を上げたとしても、本人のアルバムにそれを期待は、誰もしてませんでした。それどころか、この "Man With The Horn"というドライヴに最高な1曲は、保守的で宗教的なジャズ・ファンに、けちょんけちょんです。
アルバム通してそっち路線なら、殿のご乱心も別なリスナーを満足させていたに違いない。しかしね、アルバムのカラーの一部分だけですもの、あんまりです。

でも、まあ聴いて下さい。AORちっくなものがお好みの御仁、何とかこのアルバムのこの曲を再度評価し、せめてポテンヒットに持って行こうじゃないですか。
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by momayucue | 2012-12-31 13:55 | AOR,熱烈お勧め | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


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