AOR,熱烈お勧め

AOR 熱烈お勧め Love, Gratitude and Other Distractions/ウィル・リー

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Will Lee
ウィル・リー

職人的で、バンドサウンドの中でも突出したことをしない、しかしあらゆるミュージシャンが信頼を寄せている、ベーシスト。もはや彼のセッション数は彼の人生の日数よりも多いし、セッションしたミュージシャンも彼の人生の月数を上回るかも。

未だに最も好きなベーシストという質問には、Jaco Pastoriusと答える人は、きっと多いでしょうね。ジャンル問わず、殆どの人がそう答えるかも。彼の、前人未踏のオリジナリティと、作曲家としての凄さと、破天荒でも愛さずにいられないキャラとは、今日でも圧倒的な魅力。ぼくはベースには、かなり過剰な期待をしているのですが、直球はあまりなくて、ジャコも勿論ですが、クリス・ミン・ドーキーとかピノ・パラディーノとか、バンド・アンサンブルの中で、ごく普通の料理を出す人は少なめ。

しかしベース奏者には、もうひとつ、宿命的に重要な役割があるんです。コンポーズです。全体をコントロールする。ポール・マッカートニーからYAZAWA、細野さん、阿多剛、スティング、などなど。基本的に(阿多はあまり歌わないが)、音楽的フロントマンとしてアイデアを牽引する役割の中から、それ迄にないものを提出する人が多いんですね。ジャコも然り。
では、今日の主役、Will Leeはどうか。過去の膨大なキャリアの中で、ソロ・アルバムというのはとても少なく、2013年にリリースされたこのアルバムは、20年ぶりだとか。比較的ステージ前で踊り狂うタイプのセッション・マンではないけれど、テクニックはもう一寸聴いただけで呆れる位の音楽的安定感があるので、もしかするとマーカス・ミラーの様なサウンドなのかな、と想っていました。しかし一方で、ぼくは一寸違う期待もしてた。そうとう昔だけれど、渡辺貞夫さんの大ファンだったウィルは、彼のツアーに同行した際に、ベースと共に、時折りヴォーカルも取っていた。それが、並みのシンガーよりも圧倒的に巧くて、ソウルフルだったんです。

このアルバムは、半分がヴォーカル・チューンでした。しかも、矢野顕子とのデュエットというもうたまんない愛すべき曲もありつつ、どの歌モノでもウィルの本気は見事なもので、悪いがルカサーよりも、ネイザン・イースト(こちらもいいシンガー)よりも、本業ヴォーカリストはだしです、インストでの地味かつ美しく且つやっぱり驚異的なベース・プレイも、殊に音の「止め」が桁違いのノリを生んでいる。にしてもやはり、こう言い切ってしまおう。このアルバムは、プロ級のベーシストでもあるシンガー・ソングライターの、AOR作品だ。

決して若くはない筈なのだが、ごらんの通りの若々しくヒップな容姿と、ダサいっちゃダサいジャケットも良く似合ってる。泳ぐマトリックスみたいなこのプールの写真のおかげで、mixのトーンも爽やかでやや水しぶきがかかってて、夜の音楽というニュアンスがあまりしないのだけれど、何しろベースのストップが効いていて、シャープなことこの上ない。

所謂定番のAORをもし試しに聴いてみたかったら、YouTubeに、彼が前作でカヴァーした、TOTOのGeorgie Porgyが上がっているので聴いてみて下さい。正直なところ、これはぼくにとって、TOTO以上だ。ノリが落ち着いていて、ベースとヴォーカルとアンサンブルが素晴らしい。

それから、是非この最新作を。1曲めには聴けばすぐそれとわかる意外なゲストもいるし、ヴォーカリストとしても抜群で、ベーシストとしても普段以上に丁寧且つキメていて、アレンジもメンバーもケチのつけようがない。

どんなジャンルから見ても一流だけど、スタジオ・ミュージシャン故に寡作。しかしこういうところに、信頼に足る、現在進行形のAORはあるんです。
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by momayucue | 2013-09-08 17:22 | AOR,熱烈お勧め | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


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