つれづれ

殺したくないのに/バリ・ウッド(キャサリン・ハーヴェイ)

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相当な読書量だったのに、やはり社会人になってからめっきり本を読まなくなりまし
た。
何しろ、仕事の資料や勉強が多く、
小説やその他の楽しみで読む本は、次第に手が出なくなっていく。
たまに読むと、もう夢中になったりします。でも、読書熱がずっとは続かないです。
けっこうそういう方、多いんじゃないですか?どうでしょ。

船橋洋一さんの、「カウントダウン・メルトダウン」は、そんなぼくにあって
珍しく熟読しまくったノン・フィクション。
311震災での福島の原子力発電所を廻っての国内外の動きを取材したもので、
ぼくにはとても大きな必然性がありました。
しかし、所謂娯楽小説は…厳しかった。
感動体質のぼくは、映画なんて予告編でもう泣いてるという、省エネ型感激屋。
で、日常生活でもすぐに感激します。
でもなんていうのかな、小説に関して、…うまく言えないけれど、
感動する為のお膳立てが幾らでも出来るというか、
主人公が最後に下した決断とは…みたいなのにうまく乗っかれなかった。
乗っかれなかったというのは、読んでもだめだったとかじゃなくて、
手が出なかったんです。
もしや、小説というメディアが苦手なのか?

Bari Wood(別名でkathryn Harveyというのがあるらしいのですが)、女流作家です。
彼女の小説を、突然想い出して、入手しました。

知ったきっかけは、遠い遠い昔に見た○曜サスペンスみたいな番組。
大原麗子さんと中村敦夫さんの、怖くて切ない殺人者の物語。
地味で、心理描写が多くて、暗くて、泣けた。
ガキだったぼくは、中村敦夫刑事が、どうしてそんな恐ろしいことに自ら飛び込めるんだろうと、そしてその理由を想うと、
ひたすら切なかった。

…状況は違うけどぼくもやがてそんな運命に付き合うんだけどね。

閑話休題。ぼくはそのドラマで、原作も同じタイトルだという事まで
はっきり憶えてしまった。

「殺したくないのに」

1975年のバリ・ウッドさんの作家デビュー作。ほぼ同じ時期にSteven Kingがキャリーを書いている。
抑えきれない特殊な能力を持っている女性…。
これが男だとさ、たちまち「超能力学園Z」みたいなバカ話になる。

富豪のジェニファー。謎めいた美人。40代。
彼女は孤独。誰も打ち解けようとしない。
本能的に。
何処か彼女は危険で不気味なのだ。

刑事が追っていたとある凶悪犯は、
凡そ通常の力では有り得ない破壊力で、首を折られていた。
共犯者は怯え、気が狂っている。
刑事は、ジェニファーを調べ始める。

まあ、察しがつくでしょ、その背景は。
しかし兎に角、ウッド女史はその物語を恐怖に塗り込めてしまわなかった。
彼女は、恐怖よりも、悲しみを訴えたかったのだろうな、と想います。
自分は加害者だということに傷付きながら、
加害者として、静かに逃げ惑い、暮らすジェニファーとその母。
刑事は彼女の真実をつきとめ、自分も…。そして、結末…。

えーと、書きません。
機会があったらいずれネタバレを。

ともあれ、この本を手に取るきっかけになったあのドラマは、
俳優達もとても素敵だったし、
科白のひとつひとつも、じっくりと説得力をもって語られていて、
印象深かったんです。
音楽は…、当時の2時間ドラマって音楽チープだったでしょう。それが良かった。
今みたいな十津川警部ものでもやたら重厚なEPICになってるのとは違う。
実は当時は、大谷和夫(SHOGUN!)とか佐藤允彦とか小六禮次郎とか、
ほんとに素晴らしい人が短期間低予算の中で必死こいてやってたのです。
でも、だからこその実験も沢山あってね。
一寸この作品の音楽が誰だったかは、資料が無いのですが…。
で、演出は、なんと恩地日出夫さんですよ。
そりゃもう絶対OKです。

キャリー。それから、"Let Me In"も。いずれも、
邪悪で残酷でロマンティックな、血と性と絶望と官能と復讐の、物語。
自分を忌み嫌う共同体への、激し過ぎる復讐と、
受け入れるものにまでやがて訪れる悲劇。

Killing Gift という原題が、「殺したくないのに」と訳されたのは、
ニュアンスとして正しいかどうかは兎も角、
実に雄弁に全てを表している。
憎みたくないのに、憎悪を持ってしまう。
負のフォースに囚われてしまう。
家族と宗教の狭間で、心の内に悪魔を棲ませてしまう。
そんな題材の話は、半ば物質化したように幾らでもあるでしょう。
猿の手に願いをかけると、死んだ息子がゾンビになって帰ってくる話にしても、
シャイニングにしても、ペットセメタリーにしても、
スタンフォード監獄実験の様な実話にしても、
ただ悪魔が取り憑くわけなじゃい。平凡な良心に取り憑く。
だから不気味なんだ。
星に願いをかけるのは不気味じゃない。しかし、
それが優しい星だという保証は?神だという保証は?
それらは、付け入って忍び寄る悪かも知れないじゃない。
殺したくないのに、殺す能力があったら、人は、抑えられないかも知れない。
暴走するのかも知れない。
或いは、殺されるかも知れない。
それらを、切なさと愛らしさと絶望と、音節の美しさも含めて、
たったひとことで語った、完璧なタイトル。
この小説で、超能力者のジェニファーはそれ程力を振るわないから、
ホラーとかSFの印象はあまりなくて、寧ろミステリー要素が強いでしょう。
いや、ぼくがあまりその分野に造詣が浅すぎて、
案外ホラーものはそういう作りを大きく取り込んでいるのかもね。
犯人、というか殺人者を追い詰めようとするスタヴィッツキー刑事。
圧し留めようとしても、何度か殺してしまうジェニファー。
彼等を近付けるのは、殺人事件だった。
しかし、彼等を、引き寄せあった磁力とは、運命とは、何だったのだろう。
それは、背負った孤独なのか、突然変異的な恋なのか。
そうですこれは、恋についての話なんだ。

宮沢りえと松田龍平とかで、岩井俊二監督、どうですか?
音楽は、たにふじです勿論。
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by momayucue | 2013-10-12 02:35 | つれづれ | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


by momayucue
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