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The River/ブルース・スプリングスティーン

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POPではあるけどロックではない、たにぴ@もまゆきゅです。

Bruce Springsteenは、当初こそブレイクにもたついたものの、
その後の評価も、人気も、実力も影響力も、不動のもの。
所謂ロックな人であるのは変わらないけれど、
或る時はジャクソン・ブラウンが、或る時はトム・ウェイツが、
業界戦略的に比較されてました。
要するに大物だってこと。恐らく当のミュージシャン達にはいい迷惑だったろうけど。

「ボブ・ディランのように詩を書き、
フィル・スペクターのようなサウンドを作り、
デュアン・エディのようにギターを弾き、
ロイ・オービソンのように歌う」
という有名な科白があります。
このまんまコピーして検索するとたっくさん出てくる。
彼がこう発言したのは"Born To Run"の頃だったらしいけれど、
その科白の中での、スペクターサウンドが炸裂したのは、まさにこのアルバムの方でしょうね。
9thと3rdを行き来するフレーズが清々しい、"Hungry Heart"は、
エコーと速度がウォール・オブ・サウンド的。

ある男が、家族を置いてふっと消える。車に乗って、そのまま。
そして出逢った女に何かを見付ける。
彼は、そして彼女も、戻らない訳にはいかなかったから、
生木を割くように戻っていく。
そして、ハッピーエンド…と想いきや、
再び繰り返されるハングリー・ハートのフレーズ。

人は、満たされようとだけする、満たされない生き物なのだろうか。
Steven Paul "Steve" Jobsは、
「すてぃ・はんぐりー、すてぃ・ふーりっしゅ」と言ったとか。
その場合のハングリーは、とてもポジティブだ。
どうやらブルース・スプリングスティーンのハングリーは、違うようです。
人は皆、迷い、振り切り、戻り、後悔するのだ。と言ってる。

この後Bruceは、"Nebraska"というアコギの弾き語りアルバムを出します。
自宅で、恐らくカセットをマスターに、
自分でギターとハーモニカを演奏し、それだけをバックに。
連続殺人犯が、空っぽの心を満たす為だけに拳銃で人を殺しまくり、
裁判で、心を満たした、後悔はない…と言い切った。それがタイトル曲。
その後も全くポジティビティーのない曲が続く。そして実は、
Bruce Springsteenというミュージシャンは、あの腕っ節の逞しさも含め、
アメリカという国のグレーゾーンを心理的に体現しているのが判ってきます。
2枚組の爽快なロックンロール・アルバム、"The River"でさえ、
非常に複雑な、あらゆる階級を飲み込む病んだ心理を題材にしています。
貧しさ。そして貧しくなくとも暴力的な空虚。
それはそして際限なく繰り返すんです。

ぼくにとって、音楽は、「音楽」なので、
もしもブルースがもう少し複雑なメロディーやサウンドを作ってくれてたら、と
考えることはあります。
凝ったコード進行。凝った音色。凝ったアレンジ。
そしてえてしてそういう曲は、所謂お洒落な曲として、お洒落な歌詞が付き、
お洒落なアレンジが施され、形而的な視点は比較的キャンセルされる。

ボブ・ディランとラベルはひとつのアートの中に共存しないんだろうか…。
している例は、幾つかあると想っています。
今想い出せたのは、…そうだな、カエターノ・ヴェローソ。
闇が、真の闇が、優雅に歌われる。

恐らく多くのミュージシャンがその闇にも挑もうとしたりしている筈だ。
ストラヴィンスキーの
「音楽は何も表現しない。ただ、鳴り響く音があるだけだ」
という側に立つ人も、時には深淵を覗き込み、覗き返されている。

例えばぼくの見る深淵は、本当に深い闇なのか、それとも、
…それとも自分の強度が足りないのか。





by momayucue | 2015-05-17 23:45 | 未分類 | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


by momayucue
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