ルーカス・アルーダ
LUCAS ARRUDA
随分久々の「AOR熱烈お勧め」コーナーになりました。
この一連のシリーズを書き始めた時に、幾つか設けたルールがあります。
事情があって見過ごされているけれど、充分その筋のニーズにウケるものを集めること。どうしてそう想うかの理由も明確にすること。東南アジア、ハワイ、北欧、等の地域は避けること。L.A.やN.Y.の有名スタジオ・ミュージシャンが遠征参加のものは避けること。AORには凄い情報量の煩型マニアが沢山います。いかなローカルなものでもその筋には知られているものばかりなので、例えば(想像ですが)河合奈保子さんがDavid Fosterと作ったものなんて、参加者がTOTO~エアプレイ路線で、サウンドももろに当時のシカゴで意外性がないです。北欧もそうですが金澤寿和さんはじめ詳しい人が幾らでもいらっしゃって、最新の狩り場になってるんです。
アジアだと、ご当地でしかも作今再評価タイミングにあった人だと、ちゃんとフォーカスされているかも知れない。そういう意味ではワールド・ミュージックの波にいたDick Leeは非常に残念。一寸違う評価軸に乗った為に見過ごされてるけど、是非多くの人に聴いて欲しいところです。
けれど、素人のぼくにネタが湯水の様に出てくる訳はない。
北欧については、Ole Borudのような期待感が過熱しているのではなくて、たまたま出逢った素晴らしいデモノを紹介しちゃいました。その他、バリバリのJAZZ系やらビーチ・ボーイズ周辺の変化球やら幾つか禁じ手を使いながらも継続してきたのですが…。
ブラジルですよ問題は。
メロウなサウンド、トリッキーなコードワーク、凝りに凝ったアレンジ、圧倒的な演奏力、どれを取っても、直球AORファンをも納得させるクオリティ。いかにもなエジ・モッタ等が代表格としても、もっと普通に、ミルトン・ナシメントだってジョアン・ジルベルトだって、メロウで凝ってて巧いしAORウケしそうです。だいたいがボサノバってアダルトだし。つまり、ブラジルってきりがない、へたするとAOR全体よりもよっぽどAORかも。そしてぼくは途方にくれる。
いや、途方に暮れなくてもいい。イリアーヌってブラジル出身だったりします。イヴァン・リンスなんて、良くも悪くも「ブラジルっぽいアメリカ人」かと想うようなサウンドだけど、クインシーやリー・リトナーのおかげで既にツウのチェックが入ってる。ケヴィン・レトーも大ブレイクと迄はいかなかったけど、オーソドックスなAORとブラジル音楽の中庸を行っていて、素晴らしい。
ぼくの書いたのがもしきっかけになって、ジャズ・ピアニストとしてもコンポーザーとしても一級のイリアーヌが再評価されたら痛快なのだが、今日のところはもう一寸現代的なものにします。
Solar/ルーカス・アルーダ。Lucas Arruda。現在はフランスを拠点にしているけれど、生粋のブラジルっ子の、これは2nd。溌剌としたサンバの発音、アーバンR&Bのリズムアレンジ、しかしながらその発想の圧倒的な新しさ。シンセサイザー音源の踊り方が、不思議。ポルタメントとアルペジオと対位法。この発想が、所謂チルアウトを経た新世代の息吹きを感じさせてくれます。たにふじのニッチAORお勧め史と比較しても、こんなイマドキな奴混ぜて大丈夫かよ…という位の新世代サウンドだけど、大丈夫、これはあたりです。それこそ最近の新譜の扱いとして、すぐにモノは市場から消えてしまうかも。ダウンロードではすっきりしないご同輩、出来たら早めにどうぞ。