N.Y.での一寸泣かせる話シリーズ

前編 N.Y.ストリート・ミュージシャンの季節


N.Y.での暮らし。86年夏から87年冬。
ウェイターのバイトなどしながら、貧乏な暮らし。
どのくらい貧乏かというと……。

その年の真冬のニューヨークは、記録的な大雪でした。ぼくはマンハッタンの何処へ行くにも、なるべく歩いていた。1時間以内の距離を目途に。つまり、殆どの場所へです。
そんな調子だから、靴なんてぼろぼろ。大雪なのに、足の親指が露出していた。割りに綺麗好きなぼくは、ぼろホテルのシャワーは毎日使っていたけれど、古着で買ったコートもつぎはぎ…すらない破れたまんま。しかも髪の毛も伸び放題。そんななので、どんな危険な通りを歩いても、誰もひったくりとかしない。時にはホームレスに、ここなら北風を凌げるぞ、と声をかけられる始末でした。

まあ貧乏と言っても、ホームレスにはなってない。アマチュアの貧乏です。

初ギャラで、5$位かな、の靴を買いました。

ストリートでの演奏。街に慣れてきた頃にはかなり寒い季節になってたし、警察もやかましいし、いや、はやい話が、びびって出来なかったんです。
当時のN.Y.は、ストリートミュージシャンのメッカでした。兎に角、うさぎにつの、そこいら中にいた。ピンからキリまで。
振り付きの男女3人組フォークコーラス。
しみったれたニューエイジの笛吹き。
スティールパンのダンスバンド。
弾けもしないのにギター(多分どっかの家からかっぱらった)弾いてる陽気な黒人。その中から、少ししてスターになった人物に、スタンリー・ジョーダンという人もいた。膝の上にギターを置いて、左右の手でタッピングしながらコードも何もがちがち弾く。タッピング、だけで。
それからアップタウンの小さな公園で、バスケットゴールの脇で延々ベースソロを弾いてた長髪の白人、あれは今にして想うと、ジャコではなかったか。

雪の中、恐る恐るぼくも、ストリートミュージシャンを始めて見ました。

まず、いつも歩いてる通りの角で。
ギターを取り出し、弾き始める。少しすると、いつもそこで弾いてる白人が立ち止まって聴いていた。そいつはパット・メセニー似だけど、メセニーの6%くらいしか弾けない。しかしポーズだけは完全にメセニー風。ジーンズのポケットに手を突っ込んで、笑いながら聴いてる。ひとつ曲が終わると、手を叩いてくれた。
「いつもここ通るよね。キミもミュージシャンなんだ。日本人?」
「うん。今日は場所借りたよ」
「いや、誰の場所でもないからさ」
なあんて具合の会話をしてから、帰るときに、握手を求められた。彼のひとこと。
「ナンミョウホウレンゲキョ」
ま、まじすか。

次に、いつも使ってる駅で、いつもブルースを弾いてる、なかなかうまいヤツに話しかける。
「あいわなぷれいうぃずゆーめーん」
「オーケー。バット、キー、オブ、エー!」
彼はAでしか弾けなかった。ストラトと、ぼくのアコギで、30分くらいやってたかな。身なりのいいイタリア系のおじさんが、キャット・スティーブンスをリクエスト。

近所の公園で。
地味にインストを弾いてたら、中学生くらいの女の子2人が、寄ってきて聴いてる。でもチップはくれないだろうな。まあいいや。弾き続けると、彼女達もぼくにリクエスト。
「ギターだけ弾いてるなんて、カッコ悪い。歌ってよ」
恥ずかしながら、英語で最初から最後まで歌える曲が、なかったんです。JAZZのスタンダードなら、少しは憶えてたけど、この娘達に "All of Me"とか歌っても冴えないしな。で、ぼくは佐野元春の"Someday"を、ブルース・スプリングスティーンの真似をしながら歌いました。
「これは日本のロックシンガーの代表的な歌だよ。スプリングスティーンそっくりなんだ」
当時スプリングスティーンは、まさに"Born in the U.S.A"をリリースし、アメリカを告発(本来は)したばかり。今みたいなおじさんイメージではなく、最も若いポップスターだった。
移動しようとギターをケースにしまおうとしたら、彼女達は、
「ごめんね、お金はないけど、今向こうでお祭りやってて、鳥の羽貰えたの。これあなたにあげるわ」
からかわれてたと想ってたので、物凄く嬉しかった。

いつもの2つ隣の駅のホーム。
サミュエル・L・ジャクソンみたいな警官に追っ払われる。

続きは、また近日中に………。d0041508_11435458.jpg
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Commented by みっちい at 2007-09-30 23:33 x
NYに住んでたんですか?素晴らしい程の空気を感じます。
続きキボンヌ。
Commented by たにぴ at 2007-10-01 19:09 x
みっちいさま、色々お世話になっております。
ニューヨークは、ほら、
例のあれっすよ、
パワーステーションに潜入とか。
関係エピソードは(物議をかもしたオノヨーコさん話も含め)、
一個カテゴリ作ってますので、
沢山無いから、是非イッキ読みを、ぷりいず。
by momayucue | 2007-09-30 22:23 | N.Y.での一寸泣かせる話シリーズ | Comments(2)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


by momayucue
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