Eliane Elias
イリアーヌ・イライアス
1960年の生まれというから、私よりも3つ年上。うーん、年上のブロンド。とは言えお互
いもう年上とかどうとかいうゾーンではないのだが…。
私は国内盤で聴いているのだけど、このアルバム、ジャケットが内外で違う。向かって左が輸入盤、右の国内盤は、リムジンのバックシートに深く沈み込んだブロンドが、何処の街かは判らないけれど何処かの都市の、夜を、光に照らされながら移動するシーン。
たにふじが今回「AOR熱烈お薦め」シリーズに採りあげている作品は、一寸曲者ばかりです。サウンド的にはAORファンにはウケるに違いないのですが、このアルバム、スキモノの皆さんチェック入ってますか?何故こんな質問をしてしまうかと言うと、イリアーヌって、ROCK/POPSではなくJAZZのコーナーに置いてあるんですよね。
日本ではアダルトなシンガーとして認知されているマイケル・フランクスは、欧米ではジャズシンガーになっている、と聞いたことがあります。私の持っているジャズのイメージとは違う様な、でもジャズのリスナーが聴く音楽な様な…。しかし日本では、マイケル・フランクスとトニー・ベネットのリスナーは明らかに世界が違います。
イリアーヌは、どんなトップグループでも通用する、一流のジャズ・ピアニストです。リーダー・アルバムも出していますし、そもそも音楽家としてランディ・ブレッカーと公私のパートナーを組んでいた(過去形…)。ブラジル出身なので、ボッサのスタンダードを歌うアルバムこそありましたが、そこ迄は受け入れたとしても、このアルバムのJAZZ FANの評は、辛くて辛くて、口の中は火傷しそうです。
イリアーヌは、ビル・エヴァンスを勝気な女性にした様な、ひとかどのジャズメンだったばっかりに、こんなポップ寄りなアルバムが理解を得られなかった。
どの曲も、カヴァーの解釈も、カッコいいし洗練されているし、私はとても気に入っています。量販店でたまたま聴いたボブ・マーリーの"Jammin'"がもう決定的で即買い、どの曲も劣らず即買いのレベルなのですが、とりわけ好きな曲が。"Another Day"という曲。構成もメロディも和音の動きも、いい。ピアノも堪能出来るし、歌詞もまたいい。
これはポップだねぇ、という言いっぷりは、ケースにも相手にもよりけりですが、基本的には褒めている、持ち上げている言葉だ。しかし、ジャンルで聴く輩、例えばJAZZオリエンテッドな輩には、
「ジャズじゃない」
というのはもうNGだったりして。演奏者本人は、大概リスナーよりも柔軟です。何しろ仕事としているくらいだから、音楽をよく知ってて演奏するんです。リスナーは我儘で、期待と違うだけで他の人の演奏するAORだったら聴くのに、
「イリアーヌがこんなのを?何故?」
とはてなを出す。
正直彼女自身も、私はシンガー向きじゃない…とこぼしながら演っているのかも知れませんけどね、ともあれ私は、女性のAOR作品として他のどれよりもお薦めしたいのです。