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つれづれ

Chamber Music Society/エスペランサ・スポルディング

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今日は、ぼくらの2ndの全国リリースの日。
どうやら我ながら大好評のようでほっとしてる。
それに、イチオシの曲も色々とちらばってるのもうれしい。


さて、固い話を。
挫折とは違う音楽的混沌を経験してる、たにぴ@もまゆきゅです。

何と言うか、音楽というものがふいに遠くに感じる瞬間。
自分に何度かあったと想うんです。

まず、高校生の時。
コードとメロディとリズムの関係によそよそしさを感じ、
どれもがお互いに「取ってつけたような」感覚に陥ってしまいました。
結果、ジェフ・ベックのレッド・ブーツしか聴けない、という奇妙な体調になって、
音楽をうまく受け付けない。これは辛かった…。
2か月、TVのBGMに至る迄一切の音楽を避けるという荒療治で、
徐々に、徐々にとり戻しました。
今でも、この時の感覚が完治したのかどうか、よく判らない気がします。
先日、ゆーこさんと話していて、当時のぼくは、
「髪形」というのも顔に影響を与えるけれど、本質でもなんでもない、と、
スキンヘッドの状態を求める体質になってたのを想い出した。

2度目は、24歳位かな。
ホロフォニクスという立体音響システムを体験し、
そこにないものの音のあまりに立体感すなわちリアルさに、
実は、徹底的にリアルな自然音があれば、音楽よりも面白いんじゃないか、と、
足許がぐらぐらとするような恐怖を感じたんです。
何故恐怖?いや何となく。
この経験は多分、ハイファイだけでない音場の嗜好に繋がっています。
随分と音楽について考えるきっかけになりました。
例えば、名画は現実の風景を凌駕するものなのだろうか。
少なくとも、風景を代用するものとしての絵画なら、風景には敵わないでしょう。
では、写真は、風景の代用品以外の機能はあるだろうか。
これは相当な四面楚歌になってしまう命題ですが、
カメラマンはそれを、「ある」と信じているでしょう。
ぼくにもわからないけれど、恐らく時間軸を止めた写真という像には、
まず静寂があるし、次の場面への瞬間というものがあるし、
ある種の人工物になってしまう。

音楽は、かつてジョン・ケージという人が、
人工物でないものも音楽としてみようという実験をしています。
正確には絵画やオブジェクト作品の世界でも、
サインをするというだけのコンセプチュアル・アートがあったりしますが、
要するにアートは、作品と呼ぶかどうか、アートとして扱うかどうかに宿るもの。
アートの外側にあることもありそうだな、凄いなあ。

Esperanza Spaldingは、アップライト・ベースの非常に高度な演奏をしながら、
全く別のメロディーをフェイクたっぷりに歌うことが出来て、
当然のように極めて高度なスキャットをベースとユニゾンすることも出来る。
所謂、アーティスト気質の高いミュージシャンです。
グラミー賞の新人賞を取った時は、
ポップスターのジャスティン・ビーバーを抑えてのことで、
多くの人を驚かせた。

そして、デビュー以来比較的コンテンポラリーなジャズのフォーマットを演奏してき
た彼女が、
まさに受賞の嵐になった作品は、今日のこのアルバムだけど、
内容は編成からして意欲的。
弦のカルテットに、塩胡椒としての打楽器。
グレッチェン・パーラトが最強のスキャットで参加したり、
豪華なんだけど、所謂ポップスのフォーマットじゃない。
非常にファインなもので受賞したのが、画期的だったんですね。
これは、例えばグラミー賞という音楽賞が頭打ちになっていく風潮が、
CDのセールス等に現れてくる筈なんですよ。
その為に、カンフルを打つ必要がある、グラミーも脱皮する、という宣言なのかも。
芥川賞を大衆小説のフィールドの人が取ったりしてたでしょう。
ぼくはそれに似たような感覚を持ったものです。

この華奢な躰で、巨大な弦楽器を運び、
愛らしいシャープ気味の声で歌う。
しかしその内側はタフ。
彼女のとても不思議な言葉を聞いたことがあります。
「どんな楽器をやってみても、うまくいかなかった。
でも、或る日ベースを触ってみたら、それが自分の楽器だとわかったの。
すんなりと演奏出来ることに気が付いた」
ぼくは自分のメイン楽器であるアコギに、こんな風には出逢わなかった。
ただ、冒頭に書いた、音楽への違和感というものの、
正体は解らないけれど、その病の先にある謎めいた感覚は、
もしかすると、自分のなけなしの才能なのかも知れないと想ってるんです。
迷うための才能だ。悲しいけれど。
by momayucue | 2014-04-16 22:43 | つれづれ | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


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