つれづれ

心の襞/小椋佳

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風景が遠ざかっている、たにぴ@もまゆきゅです。

「遠ざかる風景」という傑作ライヴ盤があります。
NHKで放送されたその中継録画を、ぼくも夢中になってみました。

このコンサートとは、それまで全くメディアに出なかった、小椋佳さんのNHKホール
でのものです。

子供だったし、ライヴとかミュージシャンとかの世界に予備知識がなく、
井上陽水と並んで、TVに出ない神秘的なシンガー・ソングライターと想ってたんです。
当時からぼくは、現実をへんに
「そういうもんだ」
とまず想い込む癖があって、普通のおじさんが椅子に座って、
一切の芝居っ気もなく、脚の間で両手の指先を併せ、
ぼそぼそと歌う様を観て、ぐっと来ました。
母が、横で何かがっかりしてたことも、付け加えた方がいいのかな。
リズム帯も上手いのに出過ぎない。
途中で出てくる星勝さんも謙虚。
ストリングス。
何しろ、コンサート全体として、音楽として、良かった。
小椋さんのMCも良かった。ライヴ盤には最後の方しかはいってないけど。

「心の襞」というアルバムの、タイトル・チューン。
最初に聴いたのは、森村誠一ドラマという、
当時マルチづいていた角川書店提供のTVシリーズのエンディングで。
Bメロから始まってたんだよな。すごく音楽的に聴こえた。
小椋さんの曲は、普通のコードで普通のメロディなんだけど、
何とも形容出来ない意外さをいつも感じる。
このアルバムの随所で登場する、
えっ?という、凡庸なのにふとおうとつを感じさせるフレーズは、
アレンジと演奏の淡さで、またいいんです。
凹凸…なんだよな。引っかかりという程尖ったり傷付けたりしない。
でも、ぼくにとってはボディブローで、じわじわと効くんです。
かなり細かくアレンジが変化して、AからBに行くときに普通なら何も出来ないところ
を、
ちゃんと気付いて回収してる。
それに、このベースは誰なんだろう。なんちゅうフレーズなんだ。
子供の頃に聴いたのもあって、全曲よく憶えてて、大好きです。
「船で行った人に」のイントロの長さ。いいなあ。
「日曜日には君を」のエンディングで全然場面が変わるアレンジ。
主人公の気分転換が、アレンジによって完成する。

音楽に限らず、巧いという現象というか状況があるでしょう。
ぼくは、それも大切だと想うけど、比較的信じてない。
ヘタウマも好きだけど、そこや、味があるというのに甘えるのでもなくて、
もっと独自な、速度と、演奏のパーツの相関関係が、
大変知的に、いい方向に作用している。
詩的に、でもいい。兎に角うさぎにつの、いい音楽になってる。
子供の頃、それこそこんな世界観を自分が持つ前から、
不思議なことに、泣けてしょうがない音楽。

例えば、歌詞はもう劇的なことは何もなくて、
日常の風景や、ふとした旅の出逢いとか、静かで悲しい恋愛とか。
波乱が題材な曲は、まずない。
ひとつ、一寸だけ違うアルバムとして語られているのが、
アレンジャー星勝さんがサウンド全体を取り仕切り、
LAのミュージシャンを起用した、コンセプト・プロジェクトのアルバム。
「5・4・3・2・1・0/フライング・キティ・バンド」です。
これはね、すごいよお。小椋さんらしい言葉使いな中でも、
「地球蹴飛ばし」
宇宙に向かう少年が登場したり、ぼくも当時めっちゃときめいた。
でも、これはそうではなく、
ひたすら内省的。それも、フォーク的な世界と違い、
「特に未来にも大きな日常の変化は見込めない、凡庸が地続きな自分と世界」
が、他のアルバムと比較しても、群を抜いている。
そして、それを受け入れ、多分愛している小椋さんが、
なんてロックじゃないかっこよさだろう、と今のぼくでも想う。

ぼくは、ロックという価値観を一応理解しているつもりです。
だけどそれに特別な愛着はなくて、
結局ひとつの音楽。
もっというと、ドラマという程のものでもない音楽でも、
かっこいいと、当時も今も想います。
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by momayucue | 2014-08-31 22:05 | つれづれ | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


by momayucue
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