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【ごめん!ネタバレ全開】LOOPERの選んだこと

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観て、とても考えさせられて、悲しくて納得出来なくて、完全に映画に没頭した。「グラン・トリノ」のことです。全てのシーンに悲しい予感が滲んでいて、それが予想通りに眼前に現れた時に、救いがある、という映画でした。

でも、今日は、違う映画です。

2015'2月現在、日本のジャーナリストが、とある中東の暴走宗教…でもないような…集団に、取引きの末殺害されたニュースが喧しいです。「地雷を踏んだらサヨウナラ」の一ノ瀬泰造さん始め、危険な紛争地域に取材に出かける人は、いつの時代にもいますし、必要です。危険で、迷惑でも、必要です。そこは戦場だけれど、戦場には人間がいる。戦争をしていたり、単に暮らしていたり、している。全員が行く訳にいかないけれど、誰かが、場合によってはぼくやあなたが、行くか放り込まれるかも知れない。その連鎖を書き尽くす根性も意図もぼくにはないけれど、最も対策されている筈の原子力発電所が、内側から毒をまき散らしてしまったように、いまだに根底の動機の解らない宗教団体がサリンを放ったり、しているんです。何処かのとち狂った奴等が、秋葉原で一斉にマシンガンを乱射したり、いや、ナイフでもいいよ、殺し始めるのを、テロ対策で止められる筈がない。誰かが、解明しないといけないんです、何故そんな連鎖が起きるかを。

やっとここ迄来た。"LOOPER"を劇場で観たのは、特に強い関心があったというよりも、何か映画観たいな、これなんかどうかな…という程度でした。そして、その設定や映像の地味さと、含蓄と、全篇に滲む悲しい予感と結末に、打ちのめされたんです。
LOOPERというのは、舞台となっている2044年の死刑執行人。犯罪組織によって30年後の未来から転送されてきた人物を、射殺し、報酬を受け取る職業のこと。幾つかルールがあって、殺す相手の素性も、顔も見ない。報酬はその人物の胴体に巻きつけてある、金、ゴールド。そして、やがて、自分は自分の未来を受け取り殺すことになっている。勿論顔も見ずに。裏切ったら、ある筈の30年の未来もない。30年は裕福に生きられる。しかし、自分が自分を殺す以上、一寸屈折しているけれど、それは自殺と同じだよね。
実際、主人公のジョーは、退廃的で自暴自棄な快楽に生きてる。ドラッグと、娼婦と。まともでいられるわけないだろう、この設定じゃあねぇ。

或る日の仕事で、いつも通り転送されてきた人物を殺そうとすると、その日のそいつは、布を被っていなかった。顔を見てしまう。その顔は、30年後の、自分だった。一瞬怯んだ隙にジョーは、30年分の自分の記憶もおっている自分に翻弄され、あっさり逃げられてしまう。
ジョーは、いつもの仕事通りに自分を殺したい。まじか?でもまあそうなんです。一方未来から来た自分は、ジョーを殺したら自分も消えてなくなるし、そもそもそんな目的で来たんじゃない。未来自分は、ジョーのこれから経験することの、復讐に、と同時に犯罪の連鎖を断ち切る為に、30年の過去に戻ってきたんです。
予定では、ジョーは大金を手に早めに引退し、アジアで、幸せな生活を送る。しかし、LOOPERを運営する犯罪組織に、妻を殺されてしまう。そうか、自分は、未来のこの復讐をする為に、過去に帰ってきて、こうして自分と追いかけっこをしてるのか…という状態です。暗いなあ…。
そして未来の自分が目指しているのは、その犯罪組織「レインメーカー」のボスの、子供時代。
レインメーカーのボスはどうやら普通の人間ではなく、怪物。並みの人間にはとても近寄れない。であれば、子供時代をもとから断てば、30年分の犯罪の連鎖も無かったことに出来る。ジョーは未来から来た自分の目的地を知った。しかしそれを実行されると問題がふたつ。ひとつは自分がこれ迄殺しで得た報酬は、組織が無かったことになったらゼロになってしまう。もうひとつは、転送されてきた人物を殺し損ねたら、組織に追われ、自分が殺される。人眼を避けるようにひっそりと暮らす母子の農場が、その目的地だ。ジョーはそこへ向かう。自分を止める為、自分を殺す為。ところが、その目的地に暮らす母子の、子供の方が、未来のレインメーカーのボスだと気付いてしまった。子供時代のレインメーカーは、桁違いのサイコキネシスでどんなものでも破壊したり殺す超能力を持つ、ナイーブな少年だった。

ややこしいけれど、ここ迄だと、ネタバレしつつも、観たくなるでしょう?
でも、ここからは、やっちゃいます。ネタバレが目的ではなく、グラン・トリノも含めての物語の終結について、突然、言いたいことが自分の中に起こったので、論旨はそちらです。

ジョーは、未来の自分が、その少年を殺そうとするのを、防ごうとする。もし少年を殺そうとしても、失敗するかも知れないし、もしかするとその前に、別な人物を殺してしまうかも知れない。ジョーは、少年の母を、愛してしまった。

タイム・パラドックスはあり得ない。時間は逆には進まない。なので、有名なバタフライ・エフェクトも現実にはない。だから、細かな突っ込みは無用です。未来のレインメーカーは、タイムマシンで過去に戻って自分の母を救うことを何故しなかったのか、とか、なしです。尤もそんなことが出来ても未来へはゆっくりとしか行けないから片道旅行になるかだろうけど…。
書いちゃいましたね。未来のジョーはそこでまず、当時のジョーが愛してしまった母を、殺そうとするんです。それが、幾多のタイム・パラドックスを経て自分の眼の前で行われる以上、果たして将来自分が過去に舞い戻るということがあるのかどうか、或いはこれから30年かけて同じ人生を生きるかどうか、全く解らない。復讐の連鎖が自分にかかっている。自分の目撃しつつあるこの悲劇を、何処で止めたら全て止まるのか。自分が30年後も戻らなければ、突然レインメーカーの母親も死なずに済むということが起こる。30年後に、30年前の過去が、予め定まる。しかしそんなもの確かめられるか?というよりも、彼女を今救おうとするのが真っ当じゃないか。ジョーが未来のジョーを殺せるのなら、そうしていたかも知れない。しかしそうしたら、LOOPERという稼業は成り立つのか?30年前の今どころか、その前の過去から、根こそぎ変わるじゃないか。眼の前の奴と、自分の間を断ち切るのは、実はこの結末しかない。自死です。

それは、潔いものでも、誇りあるものでも、何でもありませんでした。観たものが感じるのは、突き付けられるリアルは、只の哀しみです。

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少し宗教的話になるかも知れません。

動物は、肉を食います。野生動物は生肉を、人間や飼われる動物は調理・加工された肉を食います。ベジタリアンであればいいということではなく、食物は、連鎖します。未開の地…、という言葉がこんにちも有効かは兎も角…に、食人習慣を持った民族もいましたが、私が知る限りではそれは、所謂宗教儀式的なもので、食文化という種類ではありません(違うのがあったらごめん)。それは兎も角、儀式として或いは飢えを凌ぐ為或いは、単に食そのものとして、動物は動物を殺して、時には肉を食います。人間が他者を攻撃するのは本能なのだという学説を唱えた人がいました。どんな生物も、殺生をしてそれを受け入れるしかなく、乗り越えようとしても暫定的でしかも自死に近い荒行になってしまうか、クルセイダーズ、十字軍のように宗教的な軍隊が勃興するか。民族紛争を一寸検索してみると、そのかなりが宗教的な要因、或いは宗教で「解決出来なかった」要員であることがわかります。どんな宗教も解決出来ない問題がある、のです。主張し、闘い、殺す迄やってしまう。ぼくは鯨が何となく愛おしい動物だと想ってますが、それでも食べ物として食べます。憎いから食べるということではなく、そういう風に今や出来てしまってるのがぼく個人です。豚も牛も、可愛い。だから知的レベル云々で評価じゃなく、習慣です。若い頃は結構好きだった動物学者のコンラート・ローレンツ博士(前出の学説)は、愛情と攻撃はどちらも生物にプリントされたもので、それを罪とはみなせない旨を主張し、ナチズム肯定と批判されたものです。もういい歳になったぼくは、その説を支持しません。遺伝子にプリントされたそれを、罪とみなすのだという意志をもプリントされているのだ、と考えています。清濁併せ呑むが、そこには罪と決意がどちらもついて廻る。最もその境界が揺れた例は、恐らく、復讐、でしょう。悪をもって悪を征す。悪を征する悪は、善だ。いや違う。悪が連鎖しているだけだ。

動物や魚を食う度に供養は、ぼくはしていないです。それと同じように、人間が人間を躊躇無く殺したことも、歴史上数え切れない。罪悪感は、かなりあやふやなものです。全く感じないタイプの人間は、どの位いるんだろう。寧ろ、罪悪感を奪ったり与えたりも出来るだろうな。しかしそれも、時間が過ぎ俯瞰して見ることが出来るようになったら、愚行蛮行に定義される。これ迄も、そうだった。たいして進化はしていないけれど、同時に、同じ結論に至るのならそれを遺伝子にプリントされていると判断することに、ぼくは躊躇しない。


人は、死地に出かけ、死地を取材し、広めたりする。それを誰もしなかったらその死地は、忘れ去られる。忘れていいわけがない。行った者が命知らずで、残ったぼくらが臆病者だというだけです。ましてや、復讐の連鎖、終わりのない憎悪を終わらせる為に、自死を選んだLOOPERのジョーにも、グラン・トリノのウォルトにも、哀しみと、哀しめる種としての希望を託し、憎しみを増幅させた奴を憐み、そして…、
テロに屈しただか何だか知らないか、紛争地で憎悪と闘った、ウルトラマンでも何でもない人間達を失うことを、哀しむ。どうしたら、憎しみを連鎖させないですむのだろう。

憎め、だって?
イヤだ。ぼくは、イヤです。







by momayucue | 2015-02-10 23:55 | もーしょんぴくちゃー | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


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