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つれづれ

音楽図鑑-2015 Deluxe Edition/坂本龍一

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音楽図鑑リアルタイム世代の、たにぴ@もまゆきゅです。

12inchシングル付きのアナログから買ってますが、
2015'3月に、未発表音源のふんだんに入った2枚組で、
小野誠彦さんのリマスターによるリイシューがされました。

未発表音源の山、凄いです。
音質、とりわけドラムトラック等の最期の詰めは、選外だったので詰まってないけれど、
それでも、音楽として非常に白眉です。
名曲SELF PORTRAITを、あの吉田美奈子さんがスキャットしたテイクは、
リズムを見直してリリースしたら、きっと大ヒットする。
元々のでも人気がある曲なのに、こんなものが眠っていたんだ。
教授の病気が快復したら、やってくんないかな。

リアルタイム世代としてはっきり憶えてるのは当時、
「あらら、普通だな…」
という感想が周辺で多かったこと。
「千のナイフ」"B2-UNIT"が非常に尖ってたことと比べると、
耳障りがいい…という一寸だけの失望を込めている感想。
ぼくはと言えばその、尖っているかどうかにどうも鈍感というか、
尖るものにあまり興味が無かったんですね。なので、これは熟成された音楽そのもので、
大スタンダード集になると確信してました。
鋭角的という意味なら寧ろ、その後に続く"Esperanto"「未来派野郎」の方が強く感じたんです。
タイミングもあるんだろうけど、「千のナイフ」からYMOを経て当時の音楽図鑑への流れで、
非常に真っ当な音楽と受け取ってたのが、ぼくでした。
なかでも、それ程人気曲ではないけれど、後年教授が好んでピアノで演奏していた、
ばりばり打ち込みの"M.A.Y. in the Backyard"という曲がぼくは当時から好きで、
いつも車で聴いてた。

シンセサイザーが最新の楽器だった時代だけど、
このアルバムの時代、1984年前後に、フェアライトCMIというサンプラーが登場する。
オーストラリア製。誰が考えたんだろう。
具体音を録音し、ビット化し、打鍵するタイミングでデジタルの具体音が鳴る。
ぼくが最初にそれを聴いた音源は、ある意味玩具的発送で、
犬の鳴き声で、ちゃっちい音で犬がわんわん言いながら、
音階で、歌うんです。
まあ遊びだから。TVのモーニングショーか何かで見た。
これでもお金かかってるんだろうな。でもまともな音楽には使えないな…。
その犬の歌がフェアライトだったのかわからないけれど、
徐々に、このフェアライトは知られてきた。
そのチープさを逆手にとったり、その中でも得意な音質を活用したり、
色々な事件が起こってく。そしてそれが教授の場合、
このアルバムの制作過程で導入され、炸裂するんです。
サンプリングについて、教授はここで実験し、
面白がって次作以降には過激になり、ポップになっていく。
巷ではトレヴァー・ホーンがアート・オブ・ノイズを始めたり、
最初から過激に過剰に向かってたけれど、教授はそういう過程は後から来て、
つまり、音楽と同一化が強かった。要は、サイノーがあり過ぎた。
だからこその、音楽図鑑という当初からの不朽の名作が誕生出来て、
以来、何を作っても過激であっても音楽的に面白い(当社比)。

同時代、トレヴァー・ホーンには先程触れましたが、
Pat Methenyが自分のバンドに、更に上位機種のシンクラビアを使い、
極悪非道な、チープさのかけらもないセレブなワークステーション・ミュージックを展開してます。
Psy・sというグループの松浦雅也さんは関西で引き籠りながら多重録音をしていましたが、
何がきっかけだったのか、決意して、個人でローンを組みフェアライトを買う。
1千万くらいだぜ。でかいよなあ。
で、関西の自主制作音楽のサポートを始めたら、
物凄いニーズが高くて、彼はあっという間に時の人になるんです。

1台で、打ち込みもサンプリングもシンセサイザーも出来るフェアライト。
一方、YAMAHAがDX-7という、
アマチュアにも手が届く価格の、斬新で品質のいい音色のシンセサイザーをリリースした。
これも音楽世界を席巻する。
教授は、けっこうそれに呑まれ、でも持ち前の音楽家としての底力が、音楽を成立させた。
それが、「音楽図鑑」の時代だったのだと想います。
トレヴァー・ホーンは大金持ち、ととあるイギリス人の知人が言ってた。
少々侮蔑的に。ベーシストとしてはいいのにね、可哀そうに。
とはいいつつも、YMOの後期傑作群がエヴァー・グリーンであるのに対し、
アート・オブ・ノイズは、もうきっと再評価はないでしょう(当社比)。

教授の、あまりにも音楽的な、こんにちでもYMOで演奏される楽曲も収まっている、
音楽の図鑑に、拍手を。







by momayucue | 2015-03-28 02:30 | つれづれ | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


by momayucue
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