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小理屈「いやカタいのなんの」

リーダーではないけれど凄い人について ライル・メイズ

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Lyle Maysというピアニスト、キーボード奏者は、当blogのウォッチャーの方は果たしてご存知なものでしょうか。かのパット・メセニーが若き日に、
「ライル・メイズと出逢う迄は、ぼくはピアノとやるなんて考えてもみなかった。彼も、ギターとやるとは想ってもみなかったそうだよ」
と発言しています。それは勿論、素晴らしいピアニストがいないという意味ではなく、自己のグループを形成するにあたり創造性が期待出来るということでしょう。どんなに巧くても、巧いだけでよいバンドになるわけではない。大物揃いのスーパーバンドが火の出るような演奏をしても、数年間の継続的な進化と各作品の充実を維持するのは、とてもとても難しいんです。

「右腕」という言い回しがあります。リーダーの頼りになるサポート。ローリング・ストーンズにおけるキース・リチャーズはおそらく右腕どころかミック・ジャガーのアンチテーゼくらいのパワーがある。しかし、そういったタイプとはまた別に、リーダーの個性を引き立てる役割の、時にはリーダー以上の実力のメンバーというのがいて、それについて漠然と考えているところです。

一時期のマイルス・ディヴィスには、まさに右腕、ギル・エヴァンスと言う才人アレンジャーがいました。スティーリー・ダンには、エンジニアのロジャー・ニコルス。映画監督のベルナルド・ベルトリッチには、ヴィットリオ・ストラーロの撮影技術が無くてはならない。そしてルパン三世には次元が。

気が付くと私は、ライル・メイズのリーダー作はみんな持ってた。或る意味メセニーよりも外れがない…というと語弊があるけれど、私の期待を裏切ることはないんです。リリースされている枚数がそもそも多いですが、メセニーのアルバムは定期的にアバンギャルドといつものスタイルを行き来しているけれど、1人の人間が出す音像としては、それ程振幅が無いのだし、これはあまり聴かないだろうというアルバムも沢山ありますよね。一方、ライル・メイズのリーダー作はどれもお気に入りで聴いてます。
で、ライルに限らず、私の癖なのかどうもフロントマン以外に眼がいってしまうことは多くて、捻くれてるなあと想う次第。サザン・オールスターズの桑田さんよりも、ドラマーの松田弘が好きだったりするし。

ただ、Lyle Maysというアメリカ人キーボード・プレイヤーは、非常に残念だと想うこともあるんです。それは本人の音楽家としての技量の話ではなく、寧ろ逆の意味合いで。どういうことかと言うと、彼はずっと、Pat Methenyとセットで語られる。右腕として、或いは双頭バンドとして。なのに、リーダー作はそれ程野心剥き出しにしていないし、課外活動も殆どないんです。その理由は何処にあるんだろう。2015年のここ数年、メセニーは、Unity Bandオーケストリオン等の演奏活動に忙しくしていて、スティーヴ・ロドビーやライルは少しツアーから解放されてる筈なのに。ベースのスティーヴは恐らくメセニーの音楽的秘書のような役割をしていて、メセニー絡みの他の作品でも共同プロデューサーとしてクレジットされていることが度々あります。役割は想像するしかないのですが、殊によると、膨大な演奏記録を全て一度聴いて、テイクを選別しているのが彼の役割ではないかと踏んでいます。ふんでるだけなので、確証はないですけど。
それはさておき、ライルはどうしてるのか…。
"Lyle Mays"←メセニーグループ的
"Streat Dreams"←ライルのアイデア炸裂!お薦め!
"Fictionary"
"Solo"

https://momayucue.exblog.jp/27895375/

↑このテキストを書いた後に公式リリースされた、ライルのリーダーアルバム。何とライヴ盤!内容素晴らしい!2枚組!


4枚のリーダー・アルバムを聴いている限りでは、PMGの仰々しさを削ぎ落としてシャープにしたような音楽性のものや、現代ビル・エヴァンスが存命ならこんな質感と想えるピアノ・トリオ。そしてそのどれにも、いかにもライルらしい凛とした佇まいがあります。シグネチャー・トーン、音楽技術、知名度。彼が本気になったら、どんな音楽制作でも出来るんです。多少失敗してもすっからかんにはならないんだから、様々なフィールドに出て、華麗なパスからキラーシュートからバシバシ決めて欲しいのに。"Streat Dreams"なんて、曲によってはドラム、スティーヴ・ガッドですよ。一度ジャコやメセニーと一緒にジョニ・ミッチェルのサポートもしてるんだし、歌伴に回ってヴォーカル曲を仕上げるのだって出来る。恐らくパット・メセニーより巧く。PMGの成果はパットの単独手柄ではなく、その背後でサウンドを作っているパット音(駄洒落です)の貢献が大きいんです。アルバム"Offramp"以来のかのバンドのテクノロジーはプログレさえ凌駕してるのに、キーボード奏者が謙虚でいたら、音楽にとっての損失ですよ。別にプログレをやって欲しい訳ではないんだけど、ライルはもっともっとあちこちに出没して欲しいんです。ルックスもかっこいいし、ディストーション・ギターもサマになるしさ。

ひとつ、そしてPMGを通してもライルには約束があるようです。リードをシンセサイザーで弾くことはあっても、アドリブ・ソロを取る時には必ずピアノ。そんな拘りもいかしてる。もうヴォーカルもやっちゃって、「AOR熱烈お勧めコーナー」に進出してくれ!

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Commented by たいち at 2020-02-21 12:36 x
全くもって仰る通り。
66歳(の若さ)で亡くなるなんて、残念です。
ライルメイズのお薦め作品参考にします。
Commented by momayucue at 2020-02-21 21:23
たいちさんはじめまして。
お勧め作品、今リンクを見てみて、びっくりしました。高い!
もう少ししたら、追悼再リリースあるかもです。とは言え半年後くらいかな…悲しい。
by momayucue | 2015-09-22 14:19 | 小理屈「いやカタいのなんの」 | Comments(2)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


by momayucue
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