つれづれ

Duets/ヘレン・メリル ロン・カーター

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ワールド・トレード・センターに想い入れたっぷりな、たにぴ@もまゆきゅです。

ムーディ―なニューヨークの夜景をあしらったジャケット。
全く同じ姿の2棟の超高層ビル。
911で失われてしまった、N.Y.の象徴のひとつだったビル。
あれから世界は、2歩進んで3歩下がって…、
正気とは想えない人物が大統領になり、
理想主義的アーティスティックな憲法が非合理的に危機にさらされ、
レイシズムが露骨になり、
もう諦めそうになっています、ぼくなどは。
戦争になるだろう、と。

当然、このアルバムに、このジャケットが用意された当時、
こんな新世紀が来るとは、誰も予想しなかったろう。
Helen MerrillとRon Carter。
1987年に、稀代の…と言っていいでしょう、名プレイヤーが、JAZZのデュエットを行った。
ヘレンも、ロン・カーターも、モダンジャズの黄金期に、
若くして名を成した、スター。
1987年頃、調度私もN.Y.で過ごした。
JAZZは商業音楽の中心ではなかったけれど、
まだまだロックやポップスやアート全般を挑発し続けていた。
ぼくもはっきりと感じていました。ジャズをやりたいのなら、ニューヨークを経験しなくては。
実際にはBLUE NOTEなどの名店クラブは日本人のビジネスマンが接待で使ってて、
まだお金は回ってるけど…あれれ?ではあった。
そんな時代。

でもねー、あんまりないよこういうDuetsってかデュエットって。
ウッドベースと、ヴォーカルですから、あーた。
ヴォーカルだったら、ギターが多いかな。
ピアノだけのバッキングは、あんまりデュオって呼ばないし。まあデュオでもいいんだが。
それにしてもさ、ベースとヴォーカル…。
ベースラインだけを伴奏に歌うことは、シチュエーションとしては稀にある。
で、段々ピアノが入ったりさ。フルバンドになっていって。
或いは、サンバなんかで、パーカスが少し入ってるのなんて、なかなかオサレです。

ロン・カーター。いったい何を突破口にしようとしたか。
ベースラインを淡々と弾く、を一旦捨てます。
昔ね、TVで、マーサ三宅さんと、テナーサックスの松本英彦さんが、
デュオで、完全2人だけで、演ってました。
たまたま観れただけで曲名も何も憶えてないですが、ひたすらかっこよかった。
あれに近い。
ベースは原則モノフォニックで、和音を鳴らすことがない。
今時の多弦エレキベースであれば、アルペジオだって出来ちゃうけど、
ロン・カーターですよ。電化前のマイルス・カルテットですよ。
それでも彼にしては珍しいプレイだと想います。
ヴォーカルにさり気無く仕えるコンシェルジュのようでもあるし、
お姫さまを誘惑する気満々なロビンフッドみたいでもある。
問題は、オレはウッドベースで、ギターとは違うんだよというのを明確にする。
敢えてたどたどしいスタイル。
ジム・ホールジョー・パスとは似てないだろ、という意志。
そして出来上がったDuetsは、出来上がってみれば当たり前にJazzだった。

87年の2月、ぼくは半年の渡米を終えて帰国した。
マイルスや、ウォーホールが死んで、
日本の家電が席捲した時代は終わった。PCとインターネットの時代が、近付いていた。
Jazzはどんどん日本企業の接待向けになり、
やがて、それも終わってしまう。
Jazzも、アメリカも、衰退していったけど、日本はもっと弱くなった。
随分あとになって、
あのワールド・トレード・センターが、マンハッタンの何処にいても見えたあのランドマークが、消えた。
もしかしたら、エンパイア・ステート・ビルディングだって、自由の女神だって、
消された可能性もあったろう。

これからも、可能性があるだろう。

今ではピッチの悪い喩えにされることさえある、Mr.Ron Carterだけど、
ぼくがよく彼を聴いていた頃は、実年齢を遥かに超えた重厚な演奏家だった。
Helenは、リボンマイクに向かって罪を告白するようなあのジャケット写真のアルバムで、
ニューヨークのため息と呼ばれる。
2人とも、高齢だけど存命だ。
あの頃のJazzは、もう終わってしまったけれど、
形も、人種も、属性も、みんな変えて、未来のジャズは続く。






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by momayucue | 2018-01-01 10:51 | つれづれ | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


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