つれづれ

教授感 CODAの重箱

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Blu-rayで漸くスティーヴン・ノムラ・シブル監督のCODAを観ました。

坂本龍一、60歳からの数年を追った、
ドキュメンタリー?取材?ノンフィクション?なのかな?
要するに密着レポート。

震災を受けての活動。現地を盛んに訪問し、知る行動。
極めて普通の意識でデモにも参加し、古臭い原子力発電の廃止を訴える。
気負いなんて全然なく。

音楽生活。

そして、癌のこと。


活字で読むインタビューよりも実際の声で聴く方が遥かに温和で棘が無い。

ラストエンペラーの音楽を担当するきっかけについては、「SELDOM‐ILLEGAL―時には、違法」で読んで知ってました。しかしここで言葉で語られると、雰囲気がかなり異なる。本だと、まるでチェスで追い込まれるようにそこに立たされた緊迫感だったけれど、口調では、
「ベルトリッチが、『モリコーネは2日でやったぞ』って言うから、やるしかないよね」
と笑顔で。勿論照れもあるだろうし、いやマジでやばかったんだよってのが実際かも知れない。でもそれをさっ引いても、本人が語る映像は親近感に溢れている。
その他にも、シェルタリング・スカイの作曲エピソード、映画監督のファシストぶりは怖かったし、20代のメイク姿、可笑しかった。
そうして、現代のRyuichi Sakamotoが、出来上がっていく。


兎に角、年齢以上に老けた様子の教授。60代に見えない。

元々年相応な外見だった教授だけど、やはり癌の治療は相当にこたえたんだと想われます。Tシャツ1枚でMacに向かう背中の、痩せてること…。食も細くなってるだろうし、お寿司は食べるけど肉はやめたとか。いや、ファンとしては、ガツガツと食って欲しい。ついでに女子もクッて欲しいところです。CODAというこの映画のタイトルも、きっと戦メリのピアノ盤からタイトルを取ってるんだと想うけど、何処となく終活を想わせるし、決して今の音楽がイヤだということではないけど、時々でいいからバキバキとした音楽もやって欲しいです。


「いい音という呪い」との和解。

これはぼくの造語です。CODAとは別なインタビューで、
津波でやられたピアノを前に最初は、
「ショックだった。ピアノの死骸を見たように感じた」
と言ってました。しかし時間が経つにつれ、
「その死骸は、自然に還ったのだと考えるようになった」
つまり、人力を超えた工業的な力でフォルムを作られたピアノという楽器を、自然が再チューニングしたと考えるようになったと発言しています。確か、NHKの番組だったかな。
これは、被災者の方々には非常に微妙な言葉だな、とぼくは想いました。津波を肯定的に捉えるってこと?になりかねない。
それに対して、地元の被災者がひとつの答えを出していました。当時少女だったその娘は、今は医療関係の仕事に付くべく勉強しているのですが、新宿に展示されていたその被災ピアノを前に、泣いていました。
ありがとう、と言いながら。
ぼくは当事者ではないので何も偉そうなことが言えないけど、恐らくですが、ピアノは死んでなかった。慎重に繊細にメンテナンスされて、生き返ったんです。
多くの命を奪った震災の中で、そのピアノちゃんは、奪われた命の記憶と供に、還ってきたんです。
それからもうひとつ、偶然だけど、教授は癌を患い、ふらふらになりながら、生還し、もう音楽を作っている。今では彼も死者の言葉を代弁する資格を(ある程度は)得た。

私事ですが、先日、恒例の隠密トークVol.6で、
「いい音って何だ?いい音って、あるの?」というトークをしました。スティーヴィー・ワンダーのデジタル録音への姿勢から彼の求めている音を読み解いたり、音楽を夜聴くプラシーボ効果についてとか、いい音を求める為のコストと原体験としての音楽の落差を、
「人間は年齢とともに質という呪いにかかる」
とぶった切ったりしました。その後頂けた感想の中に、興味深い言葉があります。
「Hiphop以降、ハイファイはダサいという価値観がある」
というもの。わざと音を汚してるのがクールだと。震災とも、疾病とも別な時間枠で、教授は確かに少しずつ、ローファイを提唱したり、北極の生録を使ったりと、音質を求めがちという現象に折り合いをつけていった様子がこの映画でも見られます。音は、物語も含めての音です。氷山の中でマイクを立てても、N.Y.でマイクを立てても、同じじゃないですか。でもそれを行うことから、音に物語がついてくる。普通の音を非凡に聴く。こうして教授が呪いを解く場に、CODAという作品は立ち合ったのだと想うんです。


ところで、CODA後の教授は、何処へ向かうんでしょうね。
DVD同梱のN.Y.でクローズドに行われたライヴでは、asyncの再現が中心でした。それはそうでしょ、だって最新アルバムだし。しかし、その他にも手がかりはあります。
"CHASM"があって、"Out Of Noise"があって、幾つかの映画音楽があって、疾病後の作品も含めて、その音楽スタイルは年々静寂に近付いてます。イニャリトウ監督の「レヴェナント 蘇りし者」にはかなり疲れた様子。ここでもう少し…などの要求がプリプロ段階でも相当に煩く、近年の音像と極端に違いはないのに、映画と併せての作り込みが余程過酷だったのでしょう。そしてその影響下に明らかにasyncはある。もっとミニマルに、もっと静寂になってる。大きな路線としてやはり、坂本龍一という音楽家は、CODAを究めていくのでしょう。

ただ、ひとつだけ例外が。「新しい靴を買わなくちゃ」のサウンドトラックです。どう違うのかは、聴いた人にはすぐわかる。













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by momayucue | 2018-06-27 23:30 | つれづれ | Comments(0)

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


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