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ライブダイアリー

ほぼほぼの書き起こし隠密トーク:時代は変わる…音楽家の変化、リスナーの変化を、一緒に聴こう

あれ程好きだったミュージシャンが、段々色褪せていくのは何故か。
音楽は色褪せず、音楽家だけが色褪せてしまうのは何故か。
そして、…それは真実なのか。
たにふじが今回も、JASRACに内緒で解析しまくりました。
驚異的な脱線力と、幾つか忘れちゃった伏線の回収を含め、これから、自前の書き起こしをします。
今回も独りで喋って1時間半は、シンドイ。

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オープニングに、ボブディランの「時代は変わる」を使った超思索的SF、「ウォッチメン」のシークエンス。



今日は脱線をかなりしていくと想います。理由は…。あいちトリエンナーレのある展示が、批判を大きく越えて脅迫を受けそして、のみならず行政から撤去を強制され、治安を維持する立場からも守られず遂に中止となったことを受けてです。本来は「表現の不自由史」を背景から可視化する試みのアートなのに、可視化は別な形で行われた。そのことと今日のテーマはあまり関係がないけれど、兎に角この時代を悲しんでいるんですね。なので、どうしてもそういう脱線をしてしまうと想います。
まずご覧頂いたのは、スーパーヒーローをモチーフにした思想SF映画の「ウォッチメン」オープニングです(ここからしばしWatchmenの説明)。これもそうとうショッキングです。

動画

例えば、「花はどこへ行った」という反戦フォークのスタンダードがあるんです。これは、歌詞だけ見ているとわからないんですが。兵士が構える銃口に、反戦運動の学生が花を挿した。だけど、兵士は、撃ってしまった。わかりあおうというメッセージを、銃で跳ね返した。それで、花がどこかへ消えてしまった、という意味なんです。
わかりますかぼくが今言いたいのは、今そういう時代になってきているのが凄く嫌だということです。
これ、天安門と何にも変わらないですよね。
かなり政治的思想的に突っ込んだ内容のヒーロー物語が、ウォッチメンでした。

既にだいぶ逸れましたが、今日のテーマが「時代は変わる」なので、ボブ・ディランのタイトル曲から始めました。

さて、もまゆきゅのblogに最近上げた、「日本にAORはどのくらい…?」というテキストは、地味な内容にも関わらずアクセス的には好調でした。まあその、上げた画像がカッコ良すぎたのが理由(矢沢永吉のメロウ期ジャケット)だと推察します(ブラウザーでリンク先写真を出した)。
(客席から)「たまたまほぼ日での特集と重なったのかも」
しばし、矢沢談義。紅白のイヤモニターつけてた話サイコー。
(しかしよく考えたら、このblogのテキストには写真で永ちゃんが出るけど永ちゃんのことは触れてないのでした…)
肝心のオピニオンは要するに、
「日本人のロックとかさぁ、だせえよな」
とか言いがちなのは日本人ばかり、そんなのに構ってられませんよというもの。フランス人はフランスのロックにコンプレックスがあるけど、引いた眼で見たらフランスのロックカッコいいですよ一寸エスニックで。
今風に言う、マウンティングか。オレの方がロックをわかってるという却って閉鎖的な自信が海外からの評価によってだっせえマウンティングなのが露呈した。ニック・デ・カロのコンサートに行った際のエピソードなどを書いてます。

実は、ぼくにも経験があります。山下達郎があの超名作"For You"を出した頃、前作や前々作と比較して、DayDreamみたいな特徴的な曲が無いなとか、Solid Sliderみたいなミュージシャンの醍醐味が無いとか、ブツブツ文句を垂れました。しかし、こんにち迄きっちりと続く達郎クロニクルの中で、For youは結局、大傑作。その他のアルバムと比べてもなんら遜色ないどころか、最も人気ある。…えーとみなさん、山下達郎の最高傑作って言うと何だと想いますか?「クリスマス・イブ」ですよ普通。そのクリスマス・イブが入ったのは、次作の、「メロディーズ」なんです。日本のポップス史上最大の成果とも言える「クリスマス・イブ」が。この時点で、ぼくの終わったかもななんてのは完全に勘違いなんです。その後も、失速するかな…ニュー・ミュージックになっちゃうかな…という罠をクリアし、素晴らしい作品を作り続けていました。なのに自分はその都度、特に自分の鼻っ柱の強さだけで、勝手に「旬を過ぎた人」と見ては、翌月にはいやぁやっぱすげぇよとなってたんです。

自分の例として挙げた山下達郎の近年の作品、みなさんは、ところで、「本当に」シュガーベイブ~80年代のアルバムのように、聴けてますか?For Youのように、Melodiesのように、聴けてますか?
Do you know "Tatsuro Yamashita"?(オランダ人のお客さんに質問。彼は日本の松岡直也が好きだとのこと。YMOのTon Pooは知ってるみたいです)

一寸ここで、ちゃんと作ってないですがパワポの小細工を。
ミュージシャンって、ほんとに変化してるのか、或いは、変化するべきなのかしないべきなのかを、4象限で作ってみました。

(資料1)
ほぼほぼの書き起こし隠密トーク:時代は変わる…音楽家の変化、リスナーの変化を、一緒に聴こう_d0041508_23321938.jpg

縦軸に、「基本変わってない/結構変わった」
横軸に、「あんまりよくない/いいですよ!」
の4象限を作ったけれど、しかも、
「基本変わってなくて、最近あんまりよくない」の所に、予め山下達郎が入ってる!怖いでしょう(笑)?ファンの反応が怖いです。
で、「変えたらダメになった」…という枠があるけど、言えないですよね(笑)。
「基本変わってなくて、ずっといい」もある。
「変えてみたら、かなり良くなった」と。
で、この4象限からはみ出すのが、
「ずっとダメなまんまなのにずっと変えようとしない」酷いですね。言えないです。
「基本バンバン変わってるけれど、変わってもアリ」の枠。
で、これに納得いかないという人、いますよね。でも、今言わないで下さい。ネタバレ。

で、ここに、いよいよ想い付きで名前入れてみましょう。
(禁断の資料2)
ほぼほぼの書き起こし隠密トーク:時代は変わる…音楽家の変化、リスナーの変化を、一緒に聴こう_d0041508_23321901.jpg


(基本変わってなくて、最近良くない枠)
(超早口で)伊勢正三松任谷由実筒美京平スティーヴィー・ワンダースティーヴン・ビショップ…。
言えないですよねー、これどうですか同意しますかみなさん!カチンと来た人もいるでしょうけど、一寸待って下さい、後で出てくる伏線なので。
(変えてみたら、一寸ダメになったに移動)
で、次。ブー・カスペルズさんは、スウェーデン語で自分の詩を歌う基本詩人の、バンドです。一度変化して、ちと落ちてしまう。もうひとつエスペランサは、後で変化を聴いてみましょう。最近ね、「聴きにくく」なってきてる。
(変化しないで、ずっといいまんま)
この例では、取り敢えずジェームス・テーラーを上げました。それから、前川清は日本のソウルシンガーです(客席が深く同意)。スティーリー・ダン、変わんないですよねー。ジョアン・ジルベルト、この人はもう1ミリも変わんない。ビルエヴァンスも、あまり変わらない。
(変化したら、良い方向に行った)
変えたらよくなった例は、まず、ジェイムス・ブラウン。以前は比較的白人ウケを狙ったPOPSだったのが、ファンクを発明するに至った。Mockyは大ファンなんですぼくら。最初は、メロウ気味なHipHopだった。ラップをやったりね。或る日突然、完全にアコースティックになった。で、めっちゃめちゃ良くなった。ぼくはそこから(Mockyを)知って遡ったクチです。ハービー・ハンコックは、マイルスの所のジャズ・ピアニストだったけれど、ストレートなジャズ時代は、個人的にはあまり評価してないんですね。一発芸に近いような。ところが、「フューチャー・ショック」でビル・ラズヴェルに出逢ってから、ガラッとパワフルになった。ウィリー・ネルソンは今も健在なカントリーのシンガー・ソングライターです、Red Headed Strangerとか。…が、「スターダスト」というアルバムを78年頃かな…キャリアめっちゃ長いからそれ以前も沢山あるんですがここで非常にメロウなジャズのスタンダード集を作る。これが素晴らしい!持ってくればよかった。河合奈保子はですね、アイドルで、しかも松田聖子に水を開けられてた。しかしその後自意識が付いてきて、ミッキー吉野とバンドをやったりしだす。彼女のオリジナルとしてのラストアルバムは(表舞台から消えても時々出してるけどそちらは除いても)、なんとアンビエント・ミュージックです。自作の。歌ってないんです。その手の所でも評価が高くて。しかもその時期の一寸手前の、まだアイドルの頃に、ディヴィッド・フォスターがプロデュースしたL.A.レコーディングの、ばりばりそっちのTOTOサウンドでアルバム作ってます。日本語で歌ってるんですが、1曲だけデュエットがあるんです。自分は日本語、相手は英語です。実はそのデュエットの相手は、ジャッキー・チェン(笑)。ディヴィッド・フォスターは一度ジャッキー・チェンのプロデュースをしたことがあるってことです。
(ずっと今イチなのに何も変えない)
いよいよ危ないところへ行ってみたいと想います。言いにくいのでフォントを少し薄くしてマス。
……すみません書き起こしでは一寸自粛させて下さい…m(_ _)m
(変化を大胆にすることで回避している)
たにふじトーク常連のジョー・ジャクソン、坂本龍一、ライ・クーダー、トム・ウェイツ、氷川きよし、ビートルズ、トッド・ラングレン。
じゃあここで何かかけたいのですが…、なんと氷川きよしを。


(動画、しかし、イントロで止める)
はいここで失礼します(爆)。後でオチがあるので、ここで…。
※変わったかどうかの基準について:インストに行った映画音楽に行った現代音楽に行った(氷川きよしは演歌からアレに変わった)
※変えて成功の基準について:今迄と違う層のファンにも届いた
※一応たにふじの主観のみで選んでます。異論は色々だと存じております。

さて、山下達郎に関して、ぼくは相当なファンで、どの曲でどのミュージシャンが演奏しているかだいたい頭に入ってるくらいです。でも最近の彼に対して、どうだろうな…と想うところはあるんですよね。ただ、多くのファンにとってそうだと想うですけど、言いにくい。理由は、信頼できちゃうところがあるんです。兎に角、ライヴがいい。
例えば、スティーヴィーも、アルバムの音像や曲の云々があっても、ライヴは絶対にいいんです。ライヴ観たことある人いますか?(客席から、ライヴじゃなくてステージに入る機会があって観たことあるという人が…すごい!)ぼくは武道館でも、N.Y.のマジソン・スクエアガーデンなどでも観ました。最近の動画を見ても、ライヴはやっぱ凄いんですよね。曲が最近のはあれだな…と想ってても、ライヴで聴いたら、全然凄い。年齢を経てもずば抜けた声の制御。かつてのヒット曲を飽きるという概念すら知らないかのようなのめり込みで演奏する。バラードのコーナー、ソロのコーナー。ずっとクオリティが高く、ポップで、巧くて、裏切られない。だから、この人が今作るものが良くないとは想えなくなってしまう。
で、ひとつライヴテイクを。
「Joy」から、"Sparkle"を)

どうですか達郎のライヴ。編成がずっと同じで、全盛期(うう、怖いよこの言葉…)のホーン・セクションが最高だったアレンジを、それこそFor Youのころみたいなのをコンサートでやったらファンは絶対嬉しいのに、休むメンバーが出てくるからとそんなところに踏み込まない。んなこと言いながら一時、
「文化村でオーケストラをバックにスタンダードやってみたい」
とかも言ってますけどね。自分を含めてギター2人、キーボード2人、ベース、ドラム、サックス。コーラスに3人。これが変わらないけど、何しろ鉄壁で、疑う余地がないんです。これがあるから、アルバムは今イチとか言いにくいんです、ぼくの場合。あんな凄いライヴを継続してるミュージシャンが、アルバム良くないわけがない…と想いたい。

では、自分が変わったのか。

また何か聴きながら話しましょうか。
(客席から「エスペランサ」のリクエスト)
エスペランサ・スポルディング。黒人の女性ジャズ・ベーシスト&シンガーです。パットメセニーなんかに見出されて登場した人なんですけど、多分ジャズに固執はあまりないのではないかと想います。かけているのは、「ラジオ・ミュージック・ソサエティ」という大好きなアルバムからです。ベースラインとかはそれでも相当凄い。Teen Townと同等くらいに複雑なアプローチです。歌の魅力は、あまりフェイクを使わず、ピンポイントでややシャープ気味に歌うんで、凄く可愛い。「愛されヴォイス」って言ってた人がいました。(ここから若干宗教に関係した自粛内容あり)ですが、ここから、今はこうなったんです。
12 Inch Spellsから。ひたすら複雑で、最近のたにふじの曲みたいです(笑えない)。
で、何か違うのをかけたいのですが、…一応ジョアン・ジルベルトも持ってきてるけど…。あ、ありました。
(ol'55/トム・ウェイツ)
トム・ウェイツの1stから。この曲はイーグルスにもカヴァーされています。デビューはこんな感じでした。ところが…。
(MidTown、レイン・ドッグより)。ウエストコーストから、ニューヨーク・サウンドに。一気にノイジーで、オルタナティブに。あ、次の曲になりましたね。これもこんなですよ(ディヴィッド・リンチ風な)。
今日は、ジョー・ジャクソンと坂本龍一は持ってきてません。いっつもぼくはあの人達ばかりなので。

マイルス・ディヴィスって、ころころ変わりますよね。
(So What?をかける)ライヴ盤で、「フォア・アンド・モア」から超高速バージョンで、村上春樹さん曰く、「喧嘩腰のテンポ設定」ですが、それでも普通にジャズですよね。
マイルスをかけながら、寺尾聡さんの話をしたいのですが、寺尾さんは「reflections」というアルバムが、音楽的キャリアのハイライトです。その前からサベージというグループサウンズをやっていて、ヒット曲もあるんですね。当時はベーシストでした。余談ですがその時の寺尾さんのベースは、後に細野さんに渡るのですが、その間に、あの岸部一徳さんも弾いてます。「太陽にほえろ」のテーマのベースは、岸部さんです。話を戻して、寺尾さんはGSの後一時期身体を壊して、キューバで生活したりしてるんですね。何故キューバかって言うと、物価が安くて、1日90円くらいで暮らせたんだそうです。お金が無いから、キューバに渡った。で、そんな生活を送りながら、81年に音楽的ハイライトを迎えます。リフレクションズの曲は全て寺尾さん自身。で、作詞は有川正沙子さんがメイン。憶えている人の方が今日は多いと想うのですが、もう何の説明も必要ないモンスターアルバムです。3曲がシングルになっています。シャドウ・シティと出航(SASURAI)と、ルビーの指輪。全部が1位を獲ってて、その年の全ての音楽賞を総なめにしています。例えばレコード大賞なんて、審査員はヒット曲とか知らないんですよ。だから、こういう曲がありますって言うプレゼンというかロビー活動をして知ってもらうのが慣習なんですけど、寺尾聡さんはその年、
「ロビー活動はしないけれど、頂けるのなら頂く」
とTVで発言しました。この一言だけで、日本中はもう彼が取らないとおかしいという雰囲気になってしまった。事実モンスターヒットだし。で、殆どの票を得て圧勝した。もう一大現象で。ギターは今剛。最大のスターになったのは、アレンジャーの井上艦ですね。その少し前迄は萩田光雄さんという人がいて、久保田早紀の異邦人などの非常に頭の柔らかいアレンジをする人がいたんだけど、井上艦が次世代として台頭してきた。
もっと言うと、みんながサングラスはレイバン(笑)。大人でもルンルンって歌ってもいい(笑)。
(客席から、「あれはお父さんの芸風だよ」との声)
え、そうなんですか?加藤善さんだっけ?宇野重吉か、失礼しました。笠智衆さんはわかるけど、どうもその2人が混乱してしまう。
(ここで自分の物真似の癖について脱線。更に…)
作詞は有川正沙子さんって言いましたけど、ルビーの指輪は、松本隆なんですよ。憎たらしい!必ず良い所を攫ってく!糸井さんは「松本隆って名前がなんてかっこいいんだ」って言ってました。
さて、寺尾聡はあまり欲が無くて、翌年にオリジナル・アルバムを出しましたが、その後は殆ど音楽活動をしなくなりました。
(ここで、マイルスの"Tutu"が流れる)
はい、今流れ出してるのは、”TuTu”という作品で、オケが殆ど打ち込みです。仕掛けがあって、全体を作っているのは、マーカス・ミラーという非常にコンテンポラリーなベーシストなんです。マーカスが作曲して、打ち込みと多重録音でオケを作り込んで、そこにマイルスが、まるでサインをするように、トランペットを吹く。そんな成り立ちだから随分と最初のジャズらしさと変わりましたよね。そういうことをすんなりと、存在感を放ちながらやる人なんです、マイルスって。
寺尾さんに話を戻して、凡そ40代になる前には、音楽で新しい変化って終わってるものだ……という気がするんですけどどうですかねみなさん?
と、若干力を込めて言ってるってことは、そうとは限らないよと言おうとしてるのは何となく解っちゃいますよね?でも、帰納法的に世の中の例を見ていくとだいたいそんな風に言われちゃうんだろうなとは想います、はい。変化するのはあんまり遅くなっちゃうのは良くないって気はする。でもこの意見ってあんまり新しいものでもないですよね。FACEBOOKにもそんな主旨の書き込みを下さった方がいましたし(その人は今日は来てくれませんでしたねー)。

あ、ここで想い出した。お葉書が来ています(一同ずっこける)。
お住まいは書いてないですが、
「たにふじのアニキ!ごとうです」
アニキって呼ばれてるの私??
「実は昨日休日出社してヘロヘロなんです。山を越えたらたにふじのアニキの、リッチーブラックモアかヴァンヘイレン並みのテクニックを観に行きたいと想います。その節は宜しくお願いします」
なんか勘違いしてますねこの人(笑)。はい、お葉書コーナーでした。

変化する人っていうのは、若い頃に変化癖をつけてたりします。先程の分類の、この辺の人達(と、指差す)。エスペランサとかはまだ若いから、これからどうなっていくかわかんないですよねー。

ここ迄は、受け手と送り手の関係、まあたにふじの自己責任で仕分けてましたが、どう聴こえるかで書いてました。

ところが、受け手と送り手の関係の前に、書かないといけないことが出てくるわけです。受け手がさも変わってないように書いてますが、例えばこの辺の頃は(達郎を指して)ぼくは10代でしたから。でも今はこんなです。変わらないわけがない。で、ややこしくなってくるので、…

(資料3)
>
ほぼほぼの書き起こし隠密トーク:時代は変わる…音楽家の変化、リスナーの変化を、一緒に聴こう_d0041508_23321935.jpg



ミュージシャン自身の好みの推移で比較しましょう。
これの縦軸は、好みが変わった/変わらない
横軸は、状況が変わった/変わらない
小分けがあって、「依頼があってやってるうちに馴染んだ」の代表格で、ライ・クーダーです。
ジョニー・ハンサム、サウンドトラック/ライ・クーダーをかける)ミッキー・ローク主演のハードボイルド映画のサウンドトラック。ウォルター・ヒルが監督なので機微があっても娯楽作品なんです。ロング・ライダースという西部劇の音楽を、ライに依頼して、ギャラが良かったというのも本人が言ってますが(補足:当時のライは知名度の割に物凄くお金に困っていた)、続けているうちに「パリ・テキサス」のようなアート・フィルムにも参加するようにある。今かかってるこの曲に至っては、ピアノ自分で弾いてます。驚き。今でもよく憶えてるんですが、当時渋谷のWAVEをうろついてたら、店内でこのサントラがかかったんです。こんな音楽をかける時代だったんですね、今じゃ考えられない。で、聴いたらまるでライ・クーダーのような、しかしどうも違うような、不思議なサントラが流れてる。手に取ってみたら、本当にライ・クーダーでした。ライもこんなに変化したり、打ち込みに走ったり…で、一番成功したのは多分キューバ音楽に行ったときだと想います。始めてのグラミー賞を取りました。それに、キューバ音楽が世界で聴かれて、外貨が増えたという(笑)。当時はクリントン政権。で、ブッシュに変わるという時期。ブッシュになったらもうキューバ音楽を作れなくなるということで、クリントンに会いに行って交渉して、もう4枚作らせてくれ、と言ったそうです。それでも相当な罰金を払ったとか。
ここもここもここも(分類表を指して)言いにく過ぎる!で、太字で大友良英さんも登場。

達郎ファンの方、いつ頃から苦手になっていきましたか?実はtwitterで、「竹内まりあの影響なんじゃないか」と言ってた人がいて、それはどうかしら…と想ってるんですけど。
(竹内まりあのセプテンバーを達郎バンドで演奏する動画)

この時はドラムがまだ青山純でした。ギターに佐橋佳幸さん。鉄壁の演奏で、しかも作曲は、ぼくが先程苦手だって言ってしまった〇〇??さんなんですが(笑)。何がわかるかというと、達郎はそういうことで歪むタイプの人間じゃないってことです。そうとう音楽的には意固地で。

さて、そんな中でも、「いやこの曲はいいんじゃないか?」って想ったりするものもあるじゃないですか。


(復活Love/嵐 作詞竹内まりあ、作曲山下達郎)
どうですか達郎ファンのみなさんどうですか?達郎フレーズのオンパレードですよ。でも、80年代のものと同等にときめきますか?ぼくはそうじゃなかった。
喩え話をしますけど、スター・ウォーズのエピソード7が公開された時に、多くの人が、「オヤジ接待」と言ったんですね。オールドファンが喜びそうなことをテンコ盛りにして、どうだって…。で、達郎の今のこれを聴いて、なんか、…うーん、そうかな…と想っちゃう。では70年代80年代のようなものをそのまま作ってみようとしても、不可能ですよね。お互いに歳取ってるんだから。彼のライヴはずっといいって何度かいいましたが、その中ひとつエピソードを紹介させて下さい。クリスマス・イヴを必ずやるんですよ、夏でも。"Let's dance Baby"もやるんです。ファンが待ってるから。或る日、客席でクリスマス・イヴをやることに対して野次ったヤツがいた。その度胸も(悪い意味で)凄いけど、達郎はその人を指差して、
「コンサートっていうのは今日初めて来てくれてる人もいるんだから、(あなたは)長いこと来てるかも知れないけど、我慢しなさい!」
って言った。つまり、やるべきことをやってる。コンサートがずっと凄いっていうのはそういうことだったんです。初めて来た人にも必ずちゃんとしたものを提供するという強い意志です。よく考えるとスティーヴィーも、ヒット曲のオンパレードなんです。それを、全力で、まるで今曲が生まれたかのように演奏するというのが凄い、と想ってるんですね。

(資料4)
a
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何か音楽もかけましょうか。ジョン・ハッセルがあったよね…。
で、さっきの、ずっと変わらずずっといいと言ってた人達、ジェームス・テーラーとかでさえ、一応別枠に書いたけど、あんまりよくなくなってきたって人達と、ずっといいじゃんって人達とは、……実は、変わらない。同じ。凄く微妙なんですよ。段々伏線回収タイムに入ってきました。ジェームス・テーラーの代表作って何ですか?多分「マッド・スライド・スリム」とか、"JT"とか、ぼくにとっては"Dad loves his work"です。スティーリー・ダンだって、ガウチョとかAjaです。モーフ・ザ・キャットっておいう人はあんまりいないんです。ジョアン・ジルベルト、最新のモノでも過去のものでも、全然変わってないです。でも、”In Tokyo”とは誰も言わない(ぼくは言うかも…むふふ)。ビル・エヴァンス。云々。AとBって、実は同じなんじゃないの?ってことです。今迄の自分の基準を全否定している!で、結構変えた人達。CとD。Cの人達は変化して今自分のところから外れたってだけで、やってること(変化していること)は同じなんです。ほんとに表裏なんですよね。(その他自粛部分)
AとB、CとDで、自分の分類を全否定しました。分類すると自分を全否定してしまうんです。

ここで、ひとつの思考実験として、「死ぬときに聴きたい音楽」を考えてみましょう。

すみません少し興奮気味になっちゃいました。
今かかっているのは、ジョン・ハッセル。比較的最近のアルバムです。このくぐもった音が一番好きなんですが、とても高齢です。90歳くらい(調べたら1937年生まれ。まだ82歳でした。バカラックより若いんだからそりゃそうですよね)。アンビエント・ジャズをやったり、大胆に変わる。
これらを聴きながら、「死ぬ時に聴きたい音楽」って、」どうですか?お葬式音楽でもいいです。
(会場から、ショスタコビーチや、Piano man/ビリージョエルなどがあがる)
死ぬ時に聴きたい音楽って、地味で落ち着いた音楽を聴きたくなる印象もありますが、中には、P-funkがいいとか、攻撃的なプロテストソングの人もいるでしょう。設問の利点というのは、必ずしも、自分が若い頃に聴いた曲になるとは限らないという点です。更に、ヒットした曲になるとも限らない。果たして、変わってしまった過去を懐かしむか、新しいものを見つけるのか、何処に行くのかがわからないのが、この設問の面白いところです。今、生きてるから、夢想でしかない。なので、「死」や、「老い」を受け入れることの実験として考えたんです。

それは、今日話していること、全てです。

山下達郎は、50歳を過ぎたらカンツォーネをやりたいと想っていて、実際にやった。彼自身は、ロードマップをもともと意識していて、実行した。だけどもコンサートでは初めて来てくれた人の為に全力を尽くすんです。アルバムを作る時に、若さを全力を尽くしてシミュレーションして、うまくいくでしょうか? 彼が今やっているものは、今彼にフィットしているものを選択しているんです。当たり前の話ですけど、昔の自分がやってる音楽の方が今よりもいいと想ってやってる人はいないんです。でしょ?

では自分は、今のメンタリティで、今のタクティクスで、今のストラトジーで、山下達郎の音楽に初めて出逢ったらどう想うか…かなり微妙です。予測がつかない。だいたい今の音楽を知ってる人の若い頃のものを遡って聴くと、若すぎてこっちも追い付かない。知っている若い達郎であったら、それはその頃に戻るだけ、究極の「自分への接待」です。
但し、一方で、今の若い人に
「これ聴いてごらん」
ってFor Youを聴かせてみたい願望もあるんです。

全部が実験なんです。変わっていくことに対して、初めての経験を前にして、ほんとはどうなんだろうという、「実験」なんです。

さて、最後の曲は、
(なんと再び氷川きよしの続きを)

ドラゴンボールのテーマ曲になってる、限界突破サバイバーという…ライヴです。
さあ、ヴォーカルを改めて、ひと呼吸置いて免疫がついたところで聴いてみると、やっぱり氷川きよしでしょ?本質ってちゃんとあって変わらないんです。
三島由紀夫の、ぼくが一番好きな小説に、こんな描写があります。
女性が日傘をさしている。陽が当たっている時と、日陰の時と、見えるものが変わるけれど、同じ女性のまま。
胃の細胞って1~2週間ですっかり入れ替わるけど、強さとか食習慣とかそんなに簡単に変わらない。身体の細胞が入れ替わっても、同じ人です。

変わってるようで変わらなくて、変わらないようでやっぱり変わっていくんです。それを受け入れる為の実験を音楽で体験していきましょう。

というのが、今日のヘンなオチでした。ありがとうございました。
(拍手。満場割れんばかりの拍手!)
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ここで、当日すっかり抜け落ちた重要な補足を。

大友良英さん。あまちゃんの音楽を担当した人ですが、元々はノイズ・ミュージシャンでした。いやほんと直前迄がそうで、その更に前にストレート・アヘッドなジャズ・ギタリストだったりもしました。彼は作品を大胆に変えていった人で、その中でも、受け身で変わっていった成果が、あまちゃん以降のビッグバンドに出ている。最近になって「盆踊り」の、老いも若きも、どうかすると犬や猫もいる群像っぷりにはまっているらしいです。
震災があって、Project FUKUSHIMAを経るうちに、
全く音楽経験のない人達でも、その場にいた人に何かを持たせて、30分で、CDに入るくらいダンサブルで面白い音楽を作れる自信が
ついたのだそうです。しかも、ご本人曰く「唯一の才能だと気付いた」と。60歳目前に。どう考えても唯一ってことはなくて、それ以前から物凄い音楽家だと想ってますが、何しろ大友さんは、この年齢で、誰よりもこれがうまく出来る。
このインタビューを読んで、私はもう震えたんです。感動した。涙出た。
だから、実験を続けましょう。どんな未来が待っているかわからない。社会は今、悪い予感に満ちています。日本でも世界でも、不思議なことに右翼も左翼も同じものを観ながら「このままでは悪くなっていく」と唱えている。つまりどう転んでも、きっと世界は、まだ暫くの間、悪くなっていくでしょう。
しかし大丈夫。音楽は、人生を受け入れる痛快な実験に満ち満ちています。















by momayucue | 2019-08-10 23:32 | ライブダイアリー

モンキーマインド・ユー・キューブ・バンドのミュージックライフ。 こんな時代も音楽でしょう!


by momayucue
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